透き通った氷は宅飲みを充実させるために重要なものです!
今回は家の冷凍庫で透明氷を作る方法を紹介します!
ウイスキーと氷の相性
実はウイスキーの大きな魅力のひとつである香りは冷やされた状態では引き立ちません。ではなぜオン・ザ・ロックやハイボールのようにウイスキーを冷やす飲み方があり、そしてそれが好まれたりするのでしょうか?
温度変化による味覚への影響
人が感じる味は、甘味・酸味・塩味・苦味・旨味の五味です。この中で甘味は温かいと感じやすく、人の体温ほどの温度で最も強く感じるといわれ、冷たいほど感じにくくなります。これとは逆に塩味は冷たいと感じやすく温かいと感じにくくなります。温度の変化を最も受けにくい味が酸味です。
ウイスキーを氷で冷やすということは、氷が融けてウイスキーを薄める効果とともに、甘味を抑えて酸味が引き立つようにする効果もあるのです。
視覚と聴覚でも美味しさがアップ!?
ウイスキーの琥珀色が透明な氷に映り込んでいる様子はとてもきれいです。徐々に冷えていくグラスのまわりに細かい水滴がついていくのも、ゆっくりと氷が融けていく様を眺めるのもウイスキーの楽しみ方です。
グラスを傾けた際に氷同士が当たる音・氷が転がる音は気持ちを癒し、安らぎを与えてくれます。
このように、味覚・嗅覚だけでなく視覚・聴覚でもウイスキーはさらに美味しくなるのです。
天然氷と冷凍庫の製氷器で作った氷との違い
天然氷と家庭用冷凍庫の製氷器で作られた氷では、見た目も性質も異なります。以下に相違点をまとめました。
製氷器の氷はなぜ白い?
冷凍庫の製氷器で氷を作る際、多くの方は水道水をそのまま利用すると思います。すると、その方法で作られた氷は外側が透明で中心に向かって白く濁っています。
この白い濁りは一体何なのかご存知ですか?
実はこの白く見える物質の正体は水の中に溶け込んでいる空気やミネラル、塩素等の不純物なんです。これら不純物由来の白い部分には雑味や臭いが閉じ込められています。
水が氷に状態変化するとき、水の中に含まれる空気や不純物を押し出しながら凍っていきます。製氷器(製氷皿)は氷一つ当たり大小様々なサイズや仕切りの数がありますが、一般的に各仕切りに対して上下・全側面から冷気が当たります。
これによって外側から凍っていき、不純物が中心に向かって押しやられ、外側が透明、中心に向かって白く濁った氷ができるわけです。
透明な天然氷はどうできる?
かき氷にも使われるような天然氷の製造販売している蔵元では以下のような条件で氷づくりが行われています。
- 天然氷づくりに使われる池は、冬場に雪が少なく冷たい風が通り抜ける日の当たらない場所
- 水は山からの湧き水
- 夜間の気温はマイナス5~10℃で、氷は一晩で1cmくらいずつ成長する
- 約2週間かけて氷の厚みが15cmになったら切り出す
- 切り出した氷はおがくずとともに氷室で貯蔵
天然氷づくりのポイントは上記5行で簡単に記述しましたが、大自然が相手になる作業でありとても大変で労力もすさまじいものでしょう。使用する池の清掃もありますし、“絶対”がない天候とのにらめっこ…
冬場に池に水を張った後は、一晩で池全面が凍るようになるまでは一度張った氷を割って捨てるという作業が続くそうです。全面に氷が張った後でも雨が降ったらやり直し。
さて、透明な氷を作る際に最も重要なのが、天然氷の作り方にもある「氷は一晩で1cmくらいずつ成長」、つまりは「水を一方向からゆっくり凍らせる」ことです!
家庭用冷凍庫で凍らせた氷が白く濁る原因が不純物であることはお知らせしました。それに加えて家庭用冷凍庫は温度がマイナス18℃以下です。自動製氷機付きの冷凍庫ではマイナス25℃まで低く設定されているようです。天然氷は上から下にゆっくりと凍っていくため、下部に空気や不純物を押し出しながら透明氷を作っていくのですが、家庭用冷凍庫では低温で急速に凍っていくため空気や不純物を押し出す暇もなく凍ってしまい、広範囲に白い濁りができてしまうのです。
また、ゆっくりと時間をかけて凍った透明な氷は、一つ一つの結晶が大きく成長しているため硬くて融けにくいのです。
製氷工場では透明氷=純氷をどう作る?
製氷工場では、工場ならではの設備と方法で透明な純氷を製造しています。
ポイントは2点
- マイナス10℃でゆっくり凍らせる
- エアレーション
天然氷と同様に水をゆっくりと凍らせるという基本は一緒ですが、工場の場合はアイス缶というステンレス製の容器にろ過した水を満たし、それを「ブライン」という不凍液が入った水槽に沈めます。
ブラインの温度はマイナス10℃に保たれ、ブラインの温度がアイス缶を通して水に伝わり、アイス缶の4側面+底面から中心に向かって凍っていきます。この時の氷結速度は1時間に2~3mmです。
これと同時にアイス缶にパイプを入れ、その先から大量の空気を送り込みます。これによって水を撹拌し、氷と水の境目の凍結面の空気をはがし取り、大気に放出することで氷の中に泡を発生させないようにしています。
製氷工場によっては凍結の進行とともに、不純物濃度が高くなった中心部の水を新鮮な水と取り換えたりもしますが、中心部の最後に凍る氷にはどうしても取り除ききれない泡が残るようです。
自宅で透明氷をDIY!
天然氷を自分で作ることは難しいですが、天然氷や製氷工場の氷の作り方をヒントに家庭用冷凍庫で透明氷を作ることはできます!
僕が自宅で行っている透明氷を作る方法を紹介します。
費用はほとんどかかりません!ダイソーで購入できるアイテムで簡単にできますよ♪
準備
製氷スペース
まず最初に、冷凍庫で透明氷づくりするスペースを確保しましょう!次にそのスペースのサイズを測定してください。
僕の場合はカミさんとの話し合いで透明氷製氷用に小さい冷凍室を確保できました。その中で幅26cm×奥行き18cm×高さ10cmを製氷スペースにしました。製氷スペースの奥につくりおきの氷やミニボトルに移し替えたウイスキーを保管しています。
発泡スチロールの箱
確保した製氷スペースに合った断熱性の高い発泡スチロールの箱が必要です。
家庭用冷凍庫内の温度はマイナス18℃以下なので、前述の通り温度が低すぎます。透明氷を作る条件の「水を一方向からゆっくり凍らせる」ことが重要ですので、できるだけ分厚い発泡スチロールで保温しながらゆっくり凍らせる必要があります。
そこで僕にとって最適なアイテムを発見しましたので紹介します!
《日本製発泡クーラーBOXインナー付》(ダイソー:330円税込)商品サイズ:30.3cm×18.8cm×19.7cm
ダイソーさんが透明氷を作るために販売してくれているようなクーラーボックスです!
こちらの商品のメリットは
- なんといっても低価格!税込み330円で購入できます!
- 分厚い発泡スチロール
- 水を入れるインナー付き
- 加工が簡単
- 意外と丈夫
低価格で保温性の条件を満たし、氷ができた時に取り出しやすいインナー付きです。発泡スチロールはもちろん、インナーは薄いプラスチック製なので冷凍室の高さに合わせて簡単に加工できます。
冷凍室の高さに合わせて上部を切りました。結果的に紐を通す部分が取り除かれ、製氷スペースにすっぽり入る幅になりました。また、発泡スチロールとインナーの間には微妙に隙間がありましたので、同じくダイソーさんで薄い発泡スチロール板を購入し、カットして隙間埋めをしました。インナーは雑に扱うと壊れてしまいそうなほど薄いのですが、月に2~3回の使用で1年以上経ちまだ破損はありません。
ちなみにこのダイソーさんの発泡クーラーBOXと出会うまでは、製氷スペースに入る最大サイズのタッパーをダイソーさんで探し出し、そのタッパーに合わせて周りを発泡スチロール板で囲うように箱を組み立てていました。さらにタッパーと発泡スチロールの間に断熱シートを入れました。冷凍室高さを最大限使うことはできませんでしたが、これでも透明氷は作れます!
不純物の少ない水
氷の白い濁りは、水中のミネラル、塩素、空気などの不純物であることは前述のとおりです。凍らせる際に一方向からゆっくりと凍らせれば不純物は押し出されますが、そもそも水中に不純物が少なければ白い部分は少なくなります。
氷作りの前に以下の方法で不純物をなるべく少なくしておきましょう!
- 浄水器を通した水道水を使う
- ミネラルウォーターの場合は軟水
- 水は煮沸してから冷ます
水道水には消毒のための塩素やその他化学物質が含まれています。これらは水の味やにおいに影響をあたえるものです。ウイスキーの美味しさを存分に楽しむためにできるだけ除去しましょう!
不純物除去のための方法に浄水器を用いることが挙げられます。飲用には浄水器は使わずミネラルウォーターというご家庭もあると思います。その場合は透明氷にとってミネラルも不純物になるので、軟水のミネラルウォーターを使いましょう。
水中の空気を除去する方法として最も簡単なのが煮沸です。水温は高いほど水中の溶存酸素は低下します。煮沸によって水中の空気を追い出し、さらに煮沸してからゆっくりと常温まで冷ますことでその間に塩素やその他の揮発性の化学物質も除去できます。浄水器がない方でも、水道水を煮沸することで水中の不純物を減らすことが可能ですので是非やりましょう!
アイスピック
出来上がった氷のブロックを程よい大きさに砕く時に必要です。それほど高い価格ではないのでお持ちでない方は是非購入して下さい。
一気に「ホームバー」感が出てテンション上がりますよ♫
ジッパー付きビニール袋かタッパー
冷凍庫の中は様々なニオイがこもっています。特に氷専用の冷凍室を確保できない方は、出来上がった透明氷をジップロック等のジッパー付きビニール袋かタッパーで密封保存して氷をニオイから守って下さい。
また、氷は保管中に冷凍庫内で小さくなっていきます。固体から気体に状態変化する現象(「昇華」といいます)です。氷中の水分子が水蒸気に変化してその分氷が小さくなります。そのまま冷凍室に置いておくよりも密封保存したほうが氷の減少は少ないので是非使いましょう!
透明氷をつくろう!
準備ができたらあとは簡単です。
下記手順で透明氷が完成します!
水は凍ると体積が大きくなります。
容器に水を満タンに入れてしまうと容器からとびでた氷になります。
冷凍室の高さによっては引っかかって開けられなくなることもあるので注意しましょう。
一方向からゆっくり凍らせていくことが重要です。
フタはせずに上面からの冷気で側面と底面は保温しながらゆっくりと凍らせましょう。一時間に2~3mm凍っていくと不純物がほどんど氷に取り込まれないようです。
冷凍庫の設定温度を変更できるのであれば「弱」にしておきましょう。
凍っていない水部分に不純物が集まっています。
雑味やニオイが凝縮した部分ということになるので捨てましょう。
完全に凍る前に不純物が含まれる水を捨てることができれば楽ですよ♪
全て凍らせてしまっても問題ありません。
容器を発泡スチロール箱から取り出して常温で数分置きます。氷の縁が融けてきたら容器から氷を取り出しましょう。
白い不純物部分はもろく崩れやすいので簡単に取り除けます。
不純物を除去した後はブロックごと冷凍庫に戻して氷を締めるときれいに割りやすいです。
また、包丁の刃を当てるだけで金属の熱伝導によってその箇所は融けていき、氷に筋をつけることができます。その筋に沿ってアイスピックを垂直に立てて小刻みに刺すとまっすぐ割れやすくなります。
冷凍庫のニオイや蒸発から氷を守りましょう。
包丁やナイフで氷の面をきれいに削っていくとさらに見た目がきれいな透明氷になります。少し手間ではありますが、挑戦してみて下さい♪
おまけの豆知識|オン・ザ・ロックの「ロック」はロック・クリスタル(水晶)
オン・ザ・ロックの「ロック」とは何を示しているかご存知でしょうか?
これはロック・クリスタル(水晶)の意味だという説があります。クリスタル(crystal)の語源はギリシャ語の「krustallos」で、「清らかな氷」という意味です。
まだガラスが発明されていないローマ時代、アルプスで採掘される透明な水晶は「氷の化石」と信じられ、ロック・クリスタルと呼ばれていました。この無色透明なロック・クリスタルは酒盃や儀式用のゴブレットなどの原料に重宝されていたそうです。
17世紀になって透明度の高い鉛ガラスが発明されるまでは、無色透明な個体の物質は天然氷とロック・クリスタルだけだったのではないでしょうか。そんな透明度の高い氷とクリスタルの関係性から、グラスの中に透明な氷の塊を置きその上からウイスキーを注ぐ飲み方の見た目から、氷塊をロック・クリスタルに見立て「オン・ザ・ロック(ス)」になったというものです。