スモーキーなウイスキーといえばスコットランドのアイラ島でつくられているアイラモルトが有名です。アイラ島で稼働している9蒸留所のアイラモルトの中でも“アイラモルトの女王”と称されているのが、「ボウモア」。今回紹介する「ボウモア レジェンド」はボウモアシリーズの中でも比較的リーズナブルなエントリーボトルとして位置づけられています。
ボウモアにはレジェンドの他にも「ボウモア No.1」という同価格帯のエントリーボトルがありますが、それぞれ特徴が異なりますので、このレビュー記事を参考にしてもらえると嬉しいです。
- スモーキーとバニラ、チョコレートがバランスよく存在
- 数滴加水するだけでかなりまろやかで、スモーキー初心者にも飲みやすい
- ボウモアシリーズのエントリーボトル
記事の後半では、同じボウモアシリーズから価格に近い「ボウモア No.1」、ボウモアを代表するボトル「ボウモア 12年」との比較もしています。ぜひ最後まで読んでいってください。
ボウモア レジェンドの基本情報・ストーリー
基本情報
銘柄 | ボウモア レジェンド |
原産国 | スコットランド(アイラ島) |
蒸留所 | ボウモア蒸留所 |
分類 | シングルモルト |
仕込み水 | ラーガン川 |
アルコール度数 | 40% |
主な熟成樽 | バーボン樽 |
所有者 | サントリーグローバルスピリッツ |
取扱い | サントリーホールディングス |
参考価格 | 約4,000~4,500円 |
ストーリー
ボウモアの概要
スコットランド西岸沖に浮かぶアイラ島。その島で最も古い歴史を持つのが、1779年創業のボウモア蒸留所です。ゲール語で「大きな岩礁」を意味するボウモアの名の通り、海辺に位置するこの蒸留所は、潮風とピート香が織りなす独特の風味を持つウイスキーを生み出しています。
ボウモア蒸留所では、現在でもフロアモルティングと呼ばれる伝統的な製法で麦芽を製造し、全使用料の30%を自社製造しています。フロアモルティングとは、床に広げた大麦に水をまき、人力で攪拌しながら発芽させるという、手間暇のかかる作業です。しかし、この工程こそがボウモア特有の複雑な風味を生み出す鍵となっています。
より詳細については『ボウモア 12年』のレビュー記事で紹介していますので、気になる方はのぞいていってください。
ボウモア レジェンドの概要
ボウモア レジェンドは熟成年数表記のないNAS(ノンエイジ)の銘柄です。ボウモア レジェンドの化粧箱裏面に書かれている内容に「最高級のバーボン樽から厳選された」との表記があることから、熟成年数にとらわれずに、ボウモアの熟成庫に眠るバーボン樽原酒からボウモア レジェンドのために選びだされたモルト原酒が使われているということでしょう。
ボウモア レジェンドのテイスティングレビュー・評価
ボウモア レジェンドの特性レーダーチャート
ボウモア レジェンドの特徴グラフ
コメント(ストレートでの評価 オススメ度:)
香り
燃やした枯れ草のようなスモーキーさ、チョコレートが感じ取れます。わずかにですがフルーティーさや華やかさも。強くはありませんがアルコール感が鼻を刺激します。開栓直後には、熟成年数の若いウイスキーでよく感じられる金属臭がわずかに感じられました。しかし、開栓からしばらく経つと金属臭はあまり目立たなくなります。
味わいと余韻
口に含むと、舌をピリピリとした刺激とともに、バニラやはちみつ、チョコレートのコクのある甘い風味、枯れ草を燃やしたようなスモーキーさ、ヨード香(イソジン系のにおい)、潮を感じます。ボウモア レジェンドの化粧箱にはシトラスとありましたが、柑橘とは少し異なるフルーティーなニュアンスをわずかに感じ取れました。
香りで感じた以上にスモーキー&ヨード香を強く味わうことができます。スモーキーウイスキー慣れしていない方には強めのスモーキーさではありますが、アイラモルトとして考えると抑えめでしょう。開栓直後は特徴グラフでアルコール:6ですが、時間が経つとアルコール感が抑えられ、5に下がります。
余韻はやや長く、僕の感覚で40秒ほど。口に含んだ瞬間から、バニラ、チョコレート、はちみつを強く感じ、ワンテンポ遅れてスモーキー&ヨードが感じられるように。スモーキー&ヨードは10秒あたりでもっとも感じやすく、バニラ、チョコレート、はちみつは徐々に弱まって余韻中盤あたりで消えていきます。口の中で飲み込まずに少し長めに味わっていると、一瞬チョコミントアイスのような風味も味わえました。
複雑さはそれほどありませんが、アイラモルトの特徴をしっかりもっています。
ボウモア レジェンドの飲み方別 オススメ度
飲み方 | オススメ度 |
---|---|
ストレート | 4 |
加水 | 5 |
オン・ザ・ロックス | 4 |
ハイボール | 4 |
ホットウイスキー | 2 |
加水 オススメ度:
数滴の加水で、柑橘が少しあらわれます。スモーキーとヨード香が弱まり、わずかに甘味も弱まります。まろやかになり、クセが控え目になるので、アイラモルト初心者でも飲みやすい味わいです。
オン・ザ・ロックス オススメ度:
柑橘系のフルーティーさが強まり、アルコール刺激はかなり落ち着きました。飲みやすい一方で、味わいが薄く、少し単調に感じられました。
ハイボール オススメ度:
スモーキーさと人工的な甘味、後味に苦味が一瞬残るハイボールです。それほど気にならないレベルですが、余韻に違和感あるエグみが少しあり、なんだかスッキリしない飲み心地に感じました。
ホットウイスキー オススメ度:
人工的な甘さ(風味)が目立つホットウイスキーでした。甘味自体は弱く、ドライな辛口です。スモーキーさは楽しめるのですがバランスが悪いように感じました。
ボウモア レジェンドとボウモア No.1、ボウモア 12年との比較
ボウモアシリーズからレジェンドと同じくエントリーボトルの「ボウモア No.1」、「ボウモア 12年」と飲み比べしました。
ボウモア レジェンドとボウモア No.1、ボウモア 12年との特性比較
ボウモア レジェンドとボウモア No.1、ボウモア 12年との特徴比較
これら3銘柄に絞った比較表を用意しました。
ボウモア レジェンド | ボウモア No.1 | ボウモア 12年 | |
---|---|---|---|
特性 | 香りよりも味わいでスモーキーさを感じる。まろやか。 | 味わいよりも香りでスモーキーさを感じる。フレッシュ。 | スモーキーながらも上品さがある。香り・味わいは豊かでバランスも良い。 |
特徴 | 〇枯草を燃やしたようなスモーキー、そして華やかさがある 〇はちみつ、オイリーさ 〇ライトよりのミディアムボディ | 〇フルーティーさとライトなスモーキーさ 〇レモンやライムの柑橘とビターさ 〇ミディアムよりのライトボディ | 〇スモーキー、ヨード香、潮の風味が強い 〇柑橘フルーティー、はちみつ、華やかな花の風味 〇クリーミーさもあるミディアムボディ |
これら3本の中でもっともスモーキーなのはボウモア 12年でした。ボウモア レジェンドとボウモア No.1はアイラモルトとしてはライトなスモーキーさで、ボウモア レジェンドははちみつ系の華やかさ、ボウモア No.1は柑橘フルーティー、ボウモア 12年はNo.1とレジェンドの要素をすべて強めに持っているといった印象。
アイラモルト入門でストレートの飲み方に慣れたい方はボウモア レジェンド(ストレートでも飲みにくい方は、数滴加水でかなり飲みやすくなります)、フルーティー&スモーキーなハイボールがお好きな方はボウモア No.1、少し他より値が張ってもエレガントな複雑さの「アイラモルトの女王」を楽しみたい方はボウモア 12年といった選択肢が考えられます。
ボウモア レジェンドのピーティーさ(スモーキーだけではなくヨード香、潮の風味も含まれる)は、No.1よりも12年に近いと感じました。
感想・まとめ:リーズナブルにアイラモルトのストレートに慣れたい方に
「アイラモルトの女王」を称するボウモアシリーズから「ボウモア レジェンド」を紹介しました。ボウモアのエントリーボトルとして同価格帯にボウモア No.1がありますが、それぞれに異なる方向性のノンエイジボトルです。アイラモルトとしては初心者向きのスモーキーさでコクのある甘い風味が特徴的でした。
ストレートか数滴加水が個人的にオススメです。
- リーズナブルで飲みやすいアイラモルトをお探しの方
- スモーキー初心者で、ストレートか数滴加水でスモーキーウイスキーに慣れたい方
- スモーキーなウイスキーは好きだけど、強烈なものはちょっと…という方
- ボディ感があるアイラモルトを欲する方