ラフロイグは“アイラモルトの王”と称されるほど世界で愛されているスコッチのシングルモルトです。そのキャッチコピーは「You either love or hate it.=好きになるか、嫌いになるかのどちらか」。そんなラフロイグシリーズの中で「ラフロイグ セレクト」はピーテッド(スモーキー)ウイスキーの入門用としてつくられたボトルです。
ラフロイグ 10年はクセがかなり強くスモーキー初心者にはハードルが高いですが、ラフロイグ セレクトはクセがありながら飲みやすさもあるボトルです。
- スモーキーとドライフルーツの共存
- 味覚としての甘味は少ないが、ドライフルーツやフルーティーな甘い風味がある
- クセはあるけど飲みやすい仕上がり
記事の後半では「ラフロイグ 10年」との比較もしています。ぜひ最後まで読んでいってください。
ラフロイグ セレクトの基本情報・ストーリー
基本情報
銘柄 | ラフロイグ セレクト |
原産国 | スコットランド(アイラ島) |
蒸留所 | ラフロイグ蒸留所 |
分類 | シングルモルト |
仕込み水 | キルブライド川の水 |
アルコール度数 | 40% |
主な熟成樽 | オロロソシェリー樽、ペドロヒメネスシェリー樽、バーボン樽、アメリカンオーク新樽 |
所有者 | サントリーホールディングス |
取扱い | ビームサントリー |
参考価格 | 約6,500~7,000円 |
ストーリー
公式サイトによると、ラフロイグ セレクトはピーテッド(スモーキー)ウイスキーの入門ボトルとして仕上げられているとのこと。ラフロイグ セレクトで使われているモルト原酒は、オロロソシェリー樽(バット)、ペドロヒメネスシェリー樽(ホグスヘッド)、ファーストフィルのバーボン樽(クォーターカスク)で熟成させたもので、それぞれ熟成度合いが異なるものをブレンドし、その後アメリカンオークの新樽で後熟させています。
バットやホグスヘッド、クォーターカスクというのは樽の名称で、樽の大きさによって変わります。樽が小さいほど原酒の液体が樽材に触れるため熟成が早く、樽材からの影響(木香)を強く受けます。それぞれの樽の違いについて下表にまとめてみました。
樽の種類 | 内容 | 樽の名称 | 樽の容量 |
---|---|---|---|
オロロソシェリー樽 | 辛口シェリー酒を熟成させた後の樽。ドライフルーツやスパイスの香りをもたらす。 | バット | 480~500ℓ |
ペドロヒメネスシェリー樽 | 甘口シェリー酒を熟成させた後の樽。ドライフルーツやシロップのような甘くてフルーティーな香りをもたらす。 | ホグスヘッド | 230~250ℓ |
ファーストフィル・バーボン樽 | バーボンを熟成させた後の樽。華やかな木香やバニラ香をもたらす。ファーストフィルはウイスキーの熟成に初めてつかわれる場合の呼び方。 | クォーターカスク | 125ℓ |
アメリカンオーク新樽 | アメリカンオークはスコッチウイスキーで一般的に使われる樽材。新樽は一度も使っていない樽のことで、力強いフレーバーを生み、熟成の進みが早い。 | ー | ー |
ラフロイグの貯蔵・熟成樽はほとんどがバーボン樽のファーストフィルですが、ラフロイグ セレクトに関しては幅広いタイプの樽で熟成という新しい香味を生むための試みとしてつくられた面もあるようです。
ラフロイグについての詳細は以前公開した「ラフロイグ 10年」のレビュー記事で紹介しています。気になる方は是非そちらも読んでみて下さい。
ラフロイグ セレクトのテイスティングレビュー・評価
ラフロイグ セレクトの特性レーダーチャート
ラフロイグ セレクトの特徴
コメント(ストレートでの評価 オススメ度:)
グラスに鼻を近づけると草の香りやスモーキー、薬品臭とともにドライフルーツ、少しエステリー(強すぎると接着剤のような香り)な華やかさが感じ取れます。
口に含むと、それほど強くはないですがレーズン、ミカンの優しい柑橘感、ライトな華やかさのあるはちみつ、ナツメグのような清涼感あるスパイスといった甘い風味、強めのスモーキーと薬品臭がバランス良く共存しています。クリーミーさもあって、アルコールによるピリピリ刺激はあるもののまろやかさも感じられます。鼻から抜けていく風味に枯草を燃やしたようなスモーキーさも。
さすがラフロイグ、スモーキーはいつまでも口内や鼻奥で感じ取れます。スモーキー以外の余韻は30秒ほどで決して長くはありません。まず6秒前後でレーズンや柑橘、はちみつ、ナツメグ、スモーキー、薬品のピークが訪れ、それらが一様に弱まってくると苦味を感じやすくなります。30秒を過ぎるとスモーキー以外の風味はほぼ感じ取れません。
ラフロイグ特有のスモーキーと薬品感はありますが、フルーティーさやドライフルーツの風味があることで飲みやすく仕上がっています。
ラフロイグ セレクトの飲み方別 オススメ度
飲み方 | オススメ度 |
---|---|
ストレート | 5 |
加水 | 4 |
オン・ザ・ロックス | 4 |
ハイボール | 5 |
ホットウイスキー | 3 |
加水 オススメ度:
甘みがまろやかになりますが、後味に苦味が残るように。少しだけ酸味も感じられるようになります。
オン・ザ・ロックス オススメ度:
フルーティーな甘味、清涼で甘いナツメグ感が増し、シナモンも感じるように。甘い系のスパイスが強まった印象です。スモーキーはかなり弱まり、少しだけ甘味料のような甘味も感じ取れます。
ストレートとはまた違った味わいが楽しめます。
ハイボール オススメ度:
スモーキーさは弱まりますが、スモーキーの内容が変わりました。いぶりがっこのような煙と塩を少し感じ、ブドウの皮で感じるようなタンニンの渋味もあることで、スモーキーながらキレの良い飲み心地のハイボールです。
ホットウイスキー オススメ度:
ウイルキー:お湯=1:2と濃いめにつくってみましたが、薄い味わいに。少し酸味が感じやすくなり、粘土のような土とオイリーが引き立ちました。
湯気とともに立ち上る香りは癒しのアロマです(僕にとって)。キャンプで焚き火しながらミカンをむいているような。
ラフロイグ セレクトとラフロイグ 10年との比較
ラフロイグのスタンダードボトル「ラフロイグ 10年」と比較しました。色にはかなり違いがあり、ラフロイグ 10年の方が濃い琥珀色をしています。
ラフロイグ セレクトとラフロイグ 10年との特性比較
ラフロイグ セレクトとラフロイグ 10年との特徴比較
これら2銘柄に絞った比較表を用意しました。
ラフロイグ セレクト | ラフロイグ 10年 | |
---|---|---|
特性 | 色々な個性がうまく調和している。10年に比べれば抑えめだけど、単体では十分にクセ強い。 | 強烈な個性で、香りが豊か(探ってみるとスモーキーの裏に色々な風味) |
特徴 | ・スモーキー、ヨード香は強めでレーズンのドライフルーツ感や柑橘のフルーティーさがある ・ライト寄りのミディアムボディ ・余韻はそれほど長くない | ・スモーキー、ヨード香、潮がとても強く、バニラも感じる ・味わっている時はオイリーでミディアムボディだが、後味はドライでライト ・余韻は長い |
ラフロイグ 10年は草と土のニュアンスのスモーキーさが強く、カラメルやバニラの甘い風味が印象的。また、飲み比べることで改めて10年の薬品感の強さがわかりました。飲み込んだあとに鼻から抜けていく薬品感はすごいです。10年と比べると、セレクトはフルーティーで軽やかで飲みやすい仕上がりです。また、穀物感についてはセレクトがウエハース、10年はより麦の風味を感じます。
セレクトは 10年と比べればクセは弱く飲みやすいと言えますが、それでもラフロイグ特有のスモーキーと薬品は十分強く感じられます。
感想・まとめ:ラフロイグの中では入門ボトルだけど、やはりクセは強め
ラフロイグが手掛けるピーテッドウイスキー入門ボトル「ラフロイグ セレクト」を紹介しました。ラフロイグ特有のスモーキー・薬品の香りとともにドライフルーツや柑橘のようなフルーティーさを併せ持つ、「ラフロイグ初心者」向けのボトルでした。ラフロイグ 10年よりは飲みやすいですが、それでも十分クセは強い仕上がりです。
個人的には、スモーキーとフルーティーが共存していて面白い味わいだと感じました。余韻は短めで複雑さはありませんが、気付くとクセになって飲んでしまいます。
- ラフロイグ以外のスモーキーウイスキーに慣れていて、スモーキー・薬品感をもっと楽しみたい方
- ブレンデッドウイスキー「アイラミスト」を飲んで、そのキーモルトであるラフロイグに興味がある方
- スモーキー&フルーティーなウイスキーをお探しの方
- スモーキーや薬品のにおいが苦手な方
- ラフロイグ 10年以上のスモーキーさでないと満足できない方