スーパーニッカは竹鶴政孝氏が追い求めた理想のウイスキーとして1962年に発売されました。発売当時、ボトルは手作業の“手吹き”による製造で年間生産量は1,000本のみ。その味わいと希少性から「幻のウイスキー」と呼ばれていました。
日本のウイスキーの父・竹鶴政孝氏が愛する妻リタの逝去後にその悲しみを乗り越えて開発した「スーパーニッカ」。
現在も多くのファンに愛される素晴らしいウイスキーです。
発売から47年後の2009年にリニューアルされ当時とは異なるブレンドになりましたが、このウイスキーは間違いなく日本を代表する味わい豊かなブレンデッドウイスキーです。
- 甘さとまろやかなコク、ほのかなスモーキーが絶妙に調和。
- 味わい豊かで力強さがある。
- シングルモルトにも劣らないおいしさ。
スーパーニッカの基本情報・ストーリー
基本情報
銘柄 | スーパーニッカ |
原産国 | 日本 |
分類 | ブレンデッド |
キーモルト | 余市モルト原酒、宮城峡モルト原酒 |
アルコール度数 | 43% |
所有者 | ニッカウヰスキー |
取扱い | アサヒビール |
参考価格 | 2,400~2,800円 |
ストーリー
スーパーニッカを語るうえで、まず日本のウイスキーの父・竹鶴政孝氏とその妻・リタ夫人について書かせていただきます。少し長くなるので早くレビューを見たいという方は読み飛ばしてください。
1917年初春、当時大阪の摂津酒造で技師として洋酒造りに携わっていた竹鶴政孝氏は、国内での本格ウイスキー製造実現のため本場スコットランド留学の社命を受けました。
翌年6月29日に日本を発った後、アメリカ経由で12月にスコットランドに到着しました。何のツテもなく単身スコットランドを訪れた政孝氏は、当時留学生を積極的に受け入れていたグラスゴー大学で勉強しながら持ち前の体当たり精神でチャンスを掴んでいきます。
ロングモーン蒸留所に突撃訪問し受け入れてもらった1週間の研修の中で「本場のウイスキー造り」を体験し、大学に戻った際にグラスゴー大医学部唯一の女子学生と出会います。それがリタさん……ではなく、リタさんの妹のエラさんでした。これを機に政孝氏はリタさんと出会います。
政孝氏の留学中に2人はお互いを認め合い恋に落ち、周囲の猛烈な反対もありましたがスコットランドで1920年に結婚。その後キャンベルタウンのヘーゼルバーン蒸留所で約半年間の実習を経て「竹鶴ノート」を完成させ、11月には留学を終えリタ夫人を連れて帰国しました。
ジャパニーズウイスキーの原点というべき「竹鶴ノート」はリタ夫人の内助の功があったからこそ完成したものです。
政孝氏はプロポーズの際に「スコットランドに留まる覚悟がある」と伝えたそうですが、リタさんは政孝氏の「日本で本物のウイスキーをつくりたい」という志とともに生きることを選んでくれました。リタ夫人は日本の言葉・文化を懸命に学び、摂津酒造退社~寿屋(サントリーの前身)での蒸留所建設と本格ウイスキー発売~理想の土地・北海道余市での会社設立(ニッカウヰスキーの前身)とウイスキーづくりなど様々な困難に立ち向かう竹鶴氏を支え続けたのです。
1961年、政孝氏を支え続けてくれた最愛の妻・リタ夫人が亡くなりました。その後2日間、政孝氏は部屋に閉じこもり深い悲しみに暮れていたそうです。
リタ夫人を亡くしたショックから政孝氏を再び立ち上がらせる原動力となったのが「スーパーニッカ」の開発でした。リタ夫人と交わした“誰もが認める本物のウイスキーをつくる”という約束を果たすべく、甥であり養子の威(たけし)氏と研究室にこもり新しいウイスキーづくりに励んだのです。
1962年、長年追い求めた理想の、そして渾身のブレンデッドウイスキー「スーパーニッカ」が誕生しました。そして同年、工場と余市川を見下ろせる墓地にキリスト教式のお墓が完成し、政孝氏はリタ夫人といつまでもいられるようにと墓石に自分の名前も刻ませました。そして墓石の裏には「IN LOVING MEMORY OF RITA TAKETSURU」の文字が刻まれています。
発売当時のスーパーニッカは最高峰の余市原酒をふんだんに使ったもので、2009年にはリニューアルされて大幅に内容は変わりました。現在のブレンドは、新樽熟成で華やかな宮城峡モルト・重厚で力強い余市モルト・蜂蜜を思わせる甘さをもつカフェグレーンが主に用いられています。
竹鶴政孝氏とリタ夫人をモデルにしたドラマがあったのは有名な話。2014年に放送されたNHKドラマ「マッサン」です。小説も出ていて、2024年3月現在ではAmazon Kindle Unlimited利用者であれば読み放題プランで購読可能です。
スーパーニッカのテイスティングレビュー・評価
スーパーニッカの特性レーダーチャート
スーパーニッカの特徴グラフ
コメント(ストレートでの評価 オススメ度:)
グラスから嗅いだ時の香りはそこまで強く感じませんでしたが、口に含んだ際に感じる香り・味わいはノンエイジのブレンデッドとは思えない豊かな味わいです。シングルモルトにも負けないくらいの深い豊かさがあります。
穀物の優しい甘さにそこまで熟していないメロンの爽やかな甘さ、フローラルな華やかさ、木樽の香りの後にダークチョコレートとかすかにピートによるスモーキーな余韻があります。アルコール刺激も少なく、様々な要素がバランスよくまとまっています。
余韻に感じるほのかなスモーキーさは、スモーキーさが苦手な方でも心地良く飲めるのではないでしょうか。
スーパーニッカの飲み方別 オススメ度
飲み方 | オススメ度 |
---|---|
ストレート | 4 |
加水 | 5 |
オン・ザ・ロックス | 3 |
ハイボール | 5 |
ホットウイスキー | 5 |
加水 オススメ度:
数滴の加水で華やかな香りが強まります。味わいはやや軽い飲み口になり、フルーティーさが強まります。バランスが整い飲みやすくなります。
このウイスキー自体がアルコール度数43%で濃い設計であるため、加水によってバランスが崩れることなく、むしろ美味しさが増します。
オン・ザ・ロックス オススメ度:
フルーティーさが抑えられ、甘いチョコレートを強く感じます。
それによってやや甘ったるい飲み口になりました。
ハイボール オススメ度:
心地良いスモーキーさで、他の飲み方よりも酸味を感じやすいです。
爽やかなメロンの風味と合わさってとてもバランスの良い美味しさのハイボールが楽しめます。
ホットウイスキー オススメ度:
暖かメロンの不思議な香り立ちです。
心地良いビターさがでることで、穀物の柔らかい甘さとマッチしています。
感想・まとめ:複雑な味わいで完成度の高いリーズナブルブレンデッドウイスキー
シングルモルトに劣らない豊かな味わいを持つスーパーニッカを紹介しました。
輸入原酒もブレンドされているため、日本洋酒酒造組合によって定義された「ジャパニーズウイスキー」とは呼べませんが、そんなことは関係ありません。スーパーニッカは間違いなくジャパニーズウイスキーの礎を築いたブレンデッドウイスキーであり、現在のブレンドもとてもおいしい香り・味わいです。
スーパーニッカは政孝氏の「リタ夫人への愛と感謝」から生まれたウイスキーです。日本産原酒と輸入原酒(多分スコットランド)がブレンド=マリッジされている方がこのお二人を表しているようで素敵だと思います♪
味わいを考慮するとコスパの良いブレンデッドウイスキーでオススメです。700ml以外に500ml、50mlの容量もありますのでまだ飲んだことがない方は機会があったら是非飲んでみて下さい!
- 2,000円台で味わい豊かで深みのあるウイスキーをお探しの方
- ストレート以外でハイボールやホットウイスキーも楽しみたい方
- NHKドラマ「マッサン」を見て、そのモデルとなった竹鶴政孝氏のリタ夫人への想いがこもったウイスキーを飲みたい方