伝統的なアイリッシュウイスキーのブランド「レッドブレスト」。アイリッシュ伝統のシングルポットスチルウイスキーといえば、レッドブレストを挙げるウイスキーファンも多いことでしょう。「レッドブレスト 12年」はレッドブレストシリーズのなかでもっとも表記年数が若いボトルでありながら、濃厚でまろやか、深い味わいで、アイリッシュウイスキー愛好家を魅了する実力派ウイスキーです。
この記事では、「レッドブレスト 12年」がどのようなウイスキーなのか、その歴史的背景から、詳しい味わい、オススメの飲み方まで徹底的にレビューしていきます。

レッドブレスト 12年を初めて飲んだ時、その奥深い味わいに感動しました。まだ飲んだことがない方には、ぜひオススメしたい一本です。
- 甘口で、フルーツやスパイスが複雑に使われた贅沢デザートのよう
- アイリッシュ伝統のシングルポットスチルウイスキーの傑作
- 余韻がとても長く、ぜひストレートで味わってほしい


記事の後半では、同じくシングルポットスチルウイスキーの「ジェムソン シングルポットスチル」、似た熟成樽構成の「ブッシュミルズ 10年」との比較もしています。ぜひ最後までご覧ください。
レッドブレスト 12年の基本情報・ストーリー
基本情報
銘柄 | レッドブレスト 12年 |
原産国 | アイルランド |
蒸留所 | 新ミドルトン蒸留所 |
分類 | シングルポットスチル |
仕込み水 | ダンゴニー川 |
主な熟成樽 | バーボン樽、シェリー樽 |
アルコール度数 | 40% |
所有者 | アイリッシュ・ディスティラーズ社 |
取扱い | ペルノ・リカール・ジャパン |
参考価格 | 5,500~6,500円 |
概要
レッドブレストの歴史


レッドブレストの歴史は、19世紀にまで遡ります。元々はダブリンの酒商「ギルビー社」が、アイリッシュ・ディスティラーズ社(IDL)が有するミドルトン蒸留所から樽ごとウイスキー原酒を購入し、自社で熟成・ボトリングして販売していたのが始まりです。
「レッドブレスト」というブランド名が公式に言及されたのが1912年のこと。レッドブレストという名前は、ヨーロッパコマドリ(Robin Redbreast)に由来し、当時のギルビー社の会長が熱心な鳥類愛好家だったことから名付けられたと言われています。
1920年代のアイルランドは政治的混乱と経済的不確実性の時代で、レッドブレストはほとんどの人々の手の届かない高級品でした。しかし、国の聖職者たちは高い地位と財力を持ち、その結果、レッドブレストはアイルランドの多くの教会の司祭館に入り込み、「神父のボトル」として親しまれるようになりました。
1970年、IDLは、卸売業者や小売業者(ボンダー)へのバルクウイスキー(樽ごとの販売)を段階的に廃止することを決定。 ギルビー社はIDLを説得し、レッドブレスト用のポットスチルウイスキーの供給を続けてもらうことに成功したものの、蒸留所の閉鎖によって原酒の供給はストップ。1985年をもって、ギルビー社によるレッドブレストの瓶詰めは終わりを迎えました。
ギルビー社は、ブランド名をIDLに売却し、1991年、IDLによってレッドブレストが再発売。今や世界で最も売れているシングルポットスチルアイリッシュウイスキーとしての地位を確立しています。
シングルポットスチル製法
レッドブレストは、「シングルポットスチルウイスキー」というアイルランド伝統の製法でつくられています。
シングルポットスチル製法は、麦芽処理された大麦と未発芽の大麦を原料とし、銅製の大きな単式蒸留器(ポットスチル)で3回蒸留を行うことを特徴とします。ミドルトン蒸溜所は、世界でも数少ない未発芽大麦を使用する蒸溜所の一つです。
1850年代、アイルランドでは高額な麦芽税が導入されたことで、多くの蒸留所は麦芽の使用料を減らし、代わりに未発芽の大麦や他の穀物を多く使うようになりました。それによってウイスキーの製造コストが安くなり、同時に麦芽だけでは達成が難しい、オイリーで絹のようなクリーミーな口当たりのウイスキーが生まれ、アイリッシュウイスキーを際立たせるスパイシーさも加わりました。
また、銅製の大きな単式蒸留器(ポットスチル)で3回蒸留を行うことで、雑味が取り除かれ、非常に滑らかでクリーンな酒質になります。
こだわりの樽熟成
レッドブレスト 12年は、バーボン樽とオロロソシェリー樽でそれぞれ最低12年間熟成された原酒が使われます。(実際はより年数の経った原酒も使われている)
バーボン樽は、アメリカンホワイトオークからつくられた容量200リットルの樽で、ケンタッキー州で製造され、ミドルトン蒸溜所に出荷される前に3~4年間バーボンウイスキーの熟成に使われたものです。
オロロソシェリー樽は、スペイン北西部のガリシアの森で樹齢150年のオークの木が伐採されるところから物語が始まります。容量500リットルのバット(大樽)に加工された後、現地のワイナリーで上質なオロロソシェリー酒を2年間熟成。 その後、シェリー酒の風味をたっぷりと吸収した樽だけが、ミドルトン蒸溜所に運ばれます。
これらの厳選されたバーボン樽とオロロソシェリー樽に、出来立てのシングルポットスチルウイスキーが詰められ、熟成されることで、レッドブレスト 12年の豊かな風味が形成されていくのです。
ジェムソン シングルポットスチルのテイスティングレビュー・評価
ジェムソン シングルポットスチルの特性レーダーチャート


ジェムソン シングルポットスチルの特徴グラフ
コメント(ストレートでの評価 オススメ度:)


※今回のレビューは、旧ボトルでのレビューになります。
香り
黒糖やレーズン、キャラメルのコクのある甘い香り、シナモンのスパイシーさ、温かみのある木のニュアンスが感じられます。開栓してグラスに注いでいる瞬間から、甘く複雑な香りが漂い、期待で胸が弾みます。
味わいと余韻


チョコレート、キャラメル、レーズン、黒糖、シナモン、木樽が強く感じられます。強くはありませんが、完熟したプラムやバニラも。複雑な甘い風味はもちろん、味覚としての甘味も強く、オイリーでクリーミー、口当たりは驚くほどなめらかで、鼻から抜けていくシナモンキャラメルの風味など、まるで高級デザートのようなウイスキーです。
12年もののウイスキーにしては熟成感があり、かなり深く濃厚な味わいです。ボディもフルボディに近い飲み口でバランスも良く、非常に高い完成度です。



アルコール刺激はほとんどないので、この豊かで奥行きのある味わいはぜひストレートで飲んでほしいです。
余韻はかなり長く、僕の感覚で90秒程度。口に含んですぐにチョコレート、キャラメル、レーズン、黒糖、プラム、バニラを感じ、数秒後にシナモンや少し清涼感のあるハーブが現れます。20秒あたりで木の風味が目立ち始め、徐々に黒糖、レーズン、キャラメル、プラム、バニラが消えていきます。その頃にはチョコレートはビターチョコレートに変化し、最後にはビターチョコ、シナモン、木の風味が残ります。 余韻の中で感じられる風味がゆったりと変化しながら心地良く続きます。非常に満足感のある余韻です。
ジェムソン シングルポットスチルの飲み方別 オススメ度
飲み方 | オススメ度 |
---|---|
![]() ![]() ストレート | 5 |
![]() ![]() 加水 | 5 |
![]() ![]() オン・ザ・ロックス | 5 |
![]() ![]() ハイボール | 4 |
![]() ![]() ホットウイスキー | 4 |
加水 オススメ度:


ストレートでもアルコール感が弱かったですが、数滴加水することでさらに刺激が無くなり、さらにまろやかに。レーズンとフルーツ、それに伴う酸味が少し弱まり、キャラメルや黒糖が強まりました。
オン・ザ・ロックス オススメ度:


わずかに苦味が出て、レーズンや黒糖、キャラメル、チョコレートも強まります。華やかさとハチミツが現れ、ビターさとのバランスが素晴らしいです。飲み干したあとに少し溶けた氷の水さえおいしい。
ハイボール オススメ度:


他の飲み方で感じていた特徴はやや薄れてしまいますが、それでもバランスの整った味わいが楽しめます。ハイボール単体としてはとてもおいしいのですが、レッドブレスト 12年の高級デザートのような味わいがきちんと活きているかというと、もったいなさを感じてしまいます。
ホットウイスキー オススメ度:


ウイスキー:お湯=1:2の濃いめでのレビューです。
他の飲み方でほとんど感じなかったアルコール刺激を少し感じるように。湯気と共に高級デザート感も飛んで行ってしまうようです。もしかすると、ぬるま湯で割るくらいの方がいいのかもしれません。
レッドブレスト 12年とジェムソン シングルポットスチル、ブッシュミルズ 10年との比較


同じ新ミドルトン蒸留所でつくられ、シングルポットスチルウイスキーである「ジェムソン シングルポットスチル」と、熟成樽の構成が同様のバーボン樽+シェリー樽であるシングルモルトアイリッシュウイスキー「ブッシュミルズ 10年」と飲み比べしました。
レッドブレスト 12年とジェムソン シングルポットスチル、ブッシュミルズ 10年との特性比較


レッドブレスト 12年とジェムソン シングルポットスチル、ブッシュミルズ 10年との特徴比較
これら3銘柄の比較表を用意しました。
レッドブレスト 12年 | ジェムソン シングルポットスチル | ブッシュミルズ 10年 | |
---|---|---|---|
特性 | 濃厚で複雑、熟成感が強く、なめらか | 濃厚で複雑、なめらか、飲みごたえあり | まろやかでスムース、洗練された飲み口 |
特徴 | 〇チョコレート、ドライフルーツ、キャラメル、シナモンが強い 〇スモーキーさはない 〇フルボディ寄りのミディアムボディ | 〇チョコレート、ハチミツ、穀物、スパイス(クローブ、ナツメグ)が強め 〇スモーキーではないが、木を加熱した際の甘い風味もある 〇フルボディ寄りのミディアムボディ | 〇モルト由来の穀物やはちみつの甘さ 〇スモーキーさはほとんどない 〇ライト寄りのミディアムボディ |
シングルポットスチルウイスキー同士の比較として、レッドブレスト 12年とジェムソン シングルポットスチルは、濃厚で複雑、なめらか、スパイシーという点で共通していました。しかし、熟成感では圧倒的にレッドブレスト 12年に軍配が上がります。力強さではジェムソン シングルポットスチルの方でしょう。また、スパイシーの内容や味わいの特徴には違いがあり、どちらも一度は飲んでみてほしいウイスキーです。ストレートを楽しみたい場合はレッドブレスト 12年、ハイボールを楽しみたい場合はジェムソン シングルポットスチルが向いているように感じました。
同様の熟成樽構成比較として、レッドブレスト 12年とブッシュミルズ 10年とでは、バーボン樽由来のバニラの風味はどちらも同程度、シェリー樽由来のドライフルーツの風味はレッドブレスト 12年の方がかなり強く感じ取れました。2銘柄の違いを強調して伝えるなら、ブッシュミルズ 10年はクリーミーで穀物感が強く、レッドブレスト 12年はオイリーで完熟フルーティーといえるでしょう。



レッドブレスト 12年は3銘柄中もっとも高価ですが、価格差以上の価値がある深い味わいがあります。
感想・まとめ:ぜひストレートで味わってほしい、高級デザートウイスキー
シングルポットスチルウイスキーの「レッドブレスト 12年」を紹介しました。アイリッシュウイスキー独特の3回蒸留によるなめらかさに加えて、シングルポットスチルならではのオイリー+クリーミー+スパイシーの甘口ウイスキーです。12年熟成ものですが、飲んで感じられる熟成感はそれ以上だと感じました。おそらく熟成期間がより長い原酒がぜいたくに使われている印象です。



ストレートで飲むことで、レッドブレスト 12年の真価を堪能できることでしょう。
- 複雑で甘いデザートのような味わいのウイスキーをお探しの方
- アイリッシュ伝統のシングルポットスチルウイスキーで間違いのない一本をお探しの方
- コストパフォーマンスの高い、満足感のあるウイスキーを求めている方





