宅飲みに生きる者の夢、ホームバー
宅飲みを愛する我々にとって、ホームバーは共通の夢であり、尽きることのないロマンです。ずらりと並んだ愛するボトル、お気に入りのグラス、手になじむバーツール。そこは、一日の終わりに本当の自分に戻るための聖域に他なりません。
しかし、現実問題として「専用の部屋がない」「カウンターを置くスペースがない」など物理的な制約が我々の夢の前に立ちはだかります。
そんな問題を解決してくれる、スタイリッシュで機動力ある「相棒」が「バーワゴン」です。
ホームバーといえば、重厚なカウンターを据えた「バーコーナー」を想像しがち。それも確かに王道です。しかし、バーワゴンには、固定式カウンターにはない圧倒的な魅力があります。
それは「機動力」と「集約性」です。
バーワゴンは、宅飲みロマンを詰め込んだ「移動する秘密基地」。 自室でまったりとウイスキーと向き合いながら、時にはリビングで映画を観ながら。あなたが望む場所全てが、ワゴンを動かした瞬間、至高のバーカウンターへと変貌します。
ボトル、グラス、バースプーン、メジャーカップ。必要なすべてが収められたそのワゴンは、もはや家具ではなく、あなたの最高の相棒です。
バーワゴン、その憧れのデザイン
今回、僕がバーワゴンを欲しくなったきっかけが、「Barワゴン-ウイスキーサロンモデル(株式会社ロイヤルマイル)」の存在。家具ブランドのPYTHAGORAの高橋代表取締役とマスター・オブ・ウイスキー静谷氏が手を組み作り出した、最高にカッコイイバーワゴンです。

気品と重厚感をまとったその姿は、機能美まで備えた優れもの。正直に言います。喉から手が出るほど欲しくなりました。しかしお値段を見て愕然…「僕には手が届かない(泣)」。でも欲しい。ならどうするか。
「これほどまでに心を揺さぶるモノならば、自らの手で生み出す。それこそロマンだ!」
というわけで、魂を込め、世界に一つの「相棒」であるバーワゴンを制作することに。
らまDIYは初級者ですので、専門知識はありません。今回は色々なYouTube動画を見たりして、少しずつ作り上げました。我流なので家具作りとしては間違いも多いでしょうが、少しでも同志たちの参考になれば嬉しいです。
バーワゴンDIY:構想(ロマン)を設計図(カタチ)へ
目指すのは、クラシックな魅力と、自分のウイスキーライフに最適化された機能性の両立です。
構想:木材+真鍮が映えるクラシックなバーワゴン
インスピレーションの源である「Barワゴン-ウイスキーサロンモデル」にならい、基調は「木」と「真鍮バー」とし、天板下にはグラスやバーツールが収納できる引き出しを設置します。
サイズ
サイズについてもBarワゴン-ウイスキーサロンモデルのサイズ(サイズ 幅70cm 奥行35cm 高さ100.5cm(天板高さ98cm))を参考にしました。ポイントは以下の通り。
- 幅70cm、奥行35cm
- ウイスキーボトル棚は2段
- 引き出しは普段使いのテイスティンググラスを収納可
②と③を考慮した結果、DIYワゴンの高さは96cm(キャスター含めず)になりました。キャスターを付けると、Barワゴン-ウイスキーサロンモデルよりも数cm高くなります。
木材(天板、棚板、側板)
バーワゴンの顔になる木材。コストを気にしながらも妥協してはいけないのが木材でしょう。バーワゴン用木材として選択肢に挙がるのが、「無垢材」と「集成材」です。


無垢板は、一本の木から切り出した、自然なままの板のことです。天然素材ならではの木目や肌触りを持ち、調湿効果や断熱性があるといった特徴があります。傷や反りが発生する可能性もありますが、経年変化を楽しめる素材です。
集成材は、天然木から切り出した小さな板(ラミナ)を、木目方向に平行に並べて接着剤で貼り合わせた人工的な木材です。無垢材のデメリットである反りや割れが少ないなどの利点があり、品質が安定していて入手しやすいのが特徴です。
実際にホームセンターに行き、色々な木材を見比べ、自分の理想とするバーワゴンを思い浮かべながら僕が導き出したものは、木目がしっかりとわかる「ヒノキの無垢材(1920mm×910mm×24mm)」です。(一枚板ではなく、巾ハギタイプといって、100~105ミリ巾の無垢板の木表と木裏を交互に接着したもので安価)


購入したヒノキ無垢材を上図の通りホームセンターでカットしてもらいました(※約210と約870の表記は、カットの際にノコギリ刃の厚み分が削れるので、実際はもっと少なくなります。今回カットしてもらった木材の約210mmは、実測で200mmでした。)。



今回はコスト重視・強度無視で、ヒノキの無垢材(1920mm×910mm)一枚から各板を切り出しました。強度:板のたわみやすさを考えると繊維方向が重要になります。
キャスター
バーワゴンの移動に必須なキャスターは、見た目だけじゃなく機能も重要です。
- 静音性…宅飲みは夜時間が多いはず。夜中にバーワゴンを動かす際の静音性は大事です。
- 耐荷重…ウイスキーボトルは700ml入りで約1.2kg/本、ワゴンに50本近く収納するなら耐荷重100kg以上あると安心。
- スムーズな動き…4輪とも360度回転のものを選べば、ワゴンをスムーズに動かせます。
- ストッパー付き…4輪のうち2輪だけでもストッパー付きであれば、地震対策になります。
- 床に優しい…移動時にフローリングに傷が付きにくい素材のタイヤを選びましょう。
これらの条件をクリアし僕が選んだキャスターがこちら。総耐荷重120kgのポリウレタン製タイヤのキャスターです。
バーワゴン外観を考えると、もう少し大きいキャスターの方が良いかと思いましたが、天板はバーテーブルとしても使うので、キャスターが大きすぎると天板高さも高くなり使いにくくなってしまいます。このキャスターを取り付けることで、床からの天板高さは103cmになります。
DIYバーワゴンの図面


今回DIYするバーワゴンのざっくり図面は上図の通り。板の厚みはすべて24mmです。製図の心得はありません。ラフなもので良いんです。重要なのは、どのボトルをどこに置くか、愛用のグラスが何脚収まるかを想像すること。
バーワゴンDIY 作業:魂を込める
①木材カット~研磨
ホームセンターでカットしてもらった木材を、自宅でさらに以下のサイズにカット。
- 天板…700mm×350mm:1枚
- 棚板…700mm×350mm:1枚、652mm×350mm:1枚
- 側板…912mm×350mm:2枚
- 背板…652mm×200mm:1枚
- ※背板(強度面で後から追加)…652mm×100mm:1枚


カットした木材は、まず80番の紙ヤスリで角を削り、木口を研磨しました。あとは徐々に番手をあげて、木材全面の木肌が手のひらに吸い付くように滑らかになるまで磨き込みます。最後に濡れたタオルで木の粉を拭き取り、乾かします。
②棚板・背板・側板の斜め穴あけ加工
愛するウイスキーボトルが並ぶバーワゴンを眺めながらホームバー気分を楽しんでいる時、ねじの頭部が見えてしまうと少し残念な気持ちになりませんか?できれば天板や側板には木目だけが美しく見えていてほしいもの。バーワゴンの組み立てには、ポケットホールジョイントを用いることにしました。


ポケットホールジョイントは、強固に木材を接合させる工法です。外側からは目立たずに木材同士をねじ止めすることができ、専用の工具を使えば初心者でも簡単にそれが可能に。今回使用したのは「Kreg(クレッグ)ポケットホールジグ310」です。
これによって、木材同士の接合が美しく仕上がります。
③真鍮バーのカットとバーの穴あけ
真鍮バーは、ホームセンターで直径4mm・1mを3本購入。側板どうしの間隔652mmに真鍮バーを側板内に差し込む深さ8mm×2を足した「668mm」にカット。自宅でディスクグラインダーを使って切断しました。


真鍮バーを差し込む穴あけ位置は、真鍮バーの高さを棚上面から5cm、バーワゴン前面及び背面から1cmの位置とし、直径4mm・深さ1cmの穴をあけました。
④塗装:亜麻仁油主成分の自然塗料


自作バーワゴンの完成度を左右する最も重要な工程、それが「塗装」です。 今回、僕が仕上げの相棒として選んだのは、ドイツ生まれの「リボス自然塗料 KALDET(カルデット) No.270」。亜麻仁油などの天然成分をベースにした、プロも愛用する浸透性オイルです。
この塗料を選んだ決め手は、なんといってもその質感の深さと機能性にあります。 一般的なニスのように表面をコーティングして光らせるのではなく、木材の内部にじっくりと染み込むため、木の呼吸を妨げません。実際に塗って拭き上げると、木目がくっきりと美しく浮かび上がり、風格が漂い始めました。刷毛替わりに、100均で5個入り100円のスポンジを切って使いました。均一に塗れて便利ですよ。



人体に有害なものは使われていないという安全性も良いですね。
リボス自然塗料 KALDETの塗り方は以下の通り行いました。
塗装(1回目)
- 木目に沿って、薄く、少量ずつ、よく伸ばすように塗ります(塗りすぎるとベタつきの原因)。
- 約10~20分後、吸収されなかった余分な塗料をキッチンタオルで拭き取ります。これを怠るとベタつきや乾燥不良の原因になります。
- 風通しを良くし、半日~1日乾燥させます。



亜麻仁油由来なのか、独特の臭いがします。僕は家族からのクレームを受けました…換気も大事ですが、乾燥には物置や使っていない部屋があると便利ですね。
仕上げ塗装
- 1回目の乾燥後、#400ペーパーで軽く研磨してから2回目を塗ります。研磨することでより美しく、手触り良く仕上がります。
- 天板のみ、3回塗り(2回目乾燥後)を施しました。天板はバーカウンターです。見栄えと耐久性が重要ですね。
リボス自然塗料 KALDETの仕上がりは、ギラつきのないマットで落ち着いた風合い。さらりとした手触りを残しつつも、しっかりと撥水効果があるため、水滴や汚れが気になるバーワゴンには実用面でも最適解でした。こだわりのDIYには、ぜひオススメしたい塗料です。
⑤組み立て(仮)


まずは自分で描いた設計図通りに組み立て(ビス止め)てみます。各木材をそれぞれ垂直にビス止めする際には、直角クランプとダイソーのFクランプを使って抑えながら行いました。真鍮バーは側板内側にあけた穴にはめ込みながら全ての木材をビス止め。キャスターも取り付けて完成!と思いきや、、、天板に手をかけて動かしてみたら、ワゴンが直角を維持できずに歪んでしまうことが判明。
当初、棚板下段は手前・奥ともに真鍮バーを設けるつもりでしたが、それでは強度不足だったため、奥には木材をはめ込むことで強度を補うことにしました。
⑥組み立て:補強と引き出しづくり
補強
⑤で不足していた強度を補うため、棚板下段にも背板を追加することにしました。ちょうど以前別のDIYした際に残っていた木材(100mm×652mm)があったので、それを使用。
引き出しづくり
次に、天板下に引き出しをつくっていきます。使用したのは9mm厚の針葉樹合板(こちらも以前別のDIYで使用した残り)、安全等級F☆☆☆☆のものです。合板には接着剤などが使われていて、それに含まれる化学物質の安全性も重要。F☆☆☆☆は最も安全な最上等級です。
⑤で組み立てた天板下の内寸を計測したところ、幅651mm×奥行325mmでした。今回引き出し用に選んだスライドレールは「アイワ金属 スライドレール ミニベアリングタイプ 246mm 1セット入り AP-1120C」です。説明書によると、引き出しとバーワゴン側板との間隔が10mm必要ということで、651-(10×2)=631mm幅の引き出しをつくる必要があります。引き出し奥行きは315mmに設定しました。
あとは引き出しの高さです。いつもメインで使用しているルイジボルミオリのテイスティンググラスとリッド(蓋)の組み合わせ高さが195mmなので、高さ190mmの引き出し+上部空間10mmを開けることにしました。
針葉樹合板は木目もあるのですが、どうしても安っぽい素材感になってしまうので、今回は合板にリメイクシートを貼ることにしました。リメイクシートであれば、いずれ引き出し前面から見える木材だけ貼り直すことも可能で、汚れても掃除しやすい。バーワゴンの気分転換も簡単です。


切った合板にリメイクシートを貼っていきます。引き出した際に見える部分も素の合板にならないように裏表・木口にも貼りました。リメイクシートを貼り終えたらいよいよ(箱の)組み立てです。引き出し箱の作り方とスライドレールの取付に関しては、「寿チャンネルDIY」さんのYouTube動画がとてもわかりやすく参考になりました。
ほぼ動画の通りにやってみて、バーワゴンへの引き出し取付ができました。
引き出し内には、普段使っているグラスやバーツールを収納します。グラス同士がぶつかるのを防ぐために仕切りを作りました。使用したのはダイソーの「切って使える仕切り板⑤(高さ14cm)」と「リメイクシート エンボス 木目柄 ダークブラウン」です。


まず引き出し箱内に仕切り板を仮組みし、仕切り板を嚙合わせる位置を確認してから仕切り板裏表両面にリメイクシートを貼ります。嚙合わせ位置だけ切れ込みを入れて、仮組みと同様に組んで、少しオシャレな仕切り板の完成です。
⑦完成:自分だけのホームバー空間


ついに、自分好みにカスタマイズされたバーワゴンが完成しました。木肌は僅かな光沢があり、自然な木目がちょっとしたアクセント、質感の異なる引き出しもワゴンの個性を演出。天板上ではもちろんカクテルメイキングが可能で、引き出し内にはグラス10脚とバーツール、ウイスキー収納用の棚には最大56本のボトルが収納可能です。



僕はおつまみも収納したかったので、下の段にはおつまみ用の布製BOX(ダイソー)を置いてます。それでもボトル40本以上収納できてます。
今回のバーワゴンDIYにかかった費用(税込)は以下の通り。
| ヒノキ無垢板 | 7,788円 |
| 木材カット 5カット | 250円 |
| 真鍮丸棒 Φ4mm×3本 | 1,973円 |
| リボス自然塗料 カルデット | 6,160円 |
| 静音キャスター 4個セット | 1,899円 |
| ダイソー商品(仕切り・シート・BOX) | 990円 |
| 合計 | 19,060円 |
これ以外に家にあった端材も使っていますが、ざっくりと約2万円でオリジナルのバーワゴンをつくることができました。塗料が少し高めでしたでしょうか。実際に使用した量は750mlのうち250mlくらいです。今後のメンテナンス代も込みの費用と考えて良しとしました。



移動の際にあると便利な取手はまだつけていないので、ホームセンターなどでピンとくるものがあったら購入して取り付けるつもりです。
まとめ:夢は自らの手で築き上げるもの
専用の部屋がなくても、ホームバーを実現するための一つの方法:バーワゴンを約2万円で自作しました。 2万円あれば既製品のバーワゴンが購入できますが、自分の好み・こだわり・部屋に合うサイズがピッタリのものにはなかなか出会えないものです。(出会えても手が届かなかったり…)
さあ、工具を手に取り、あなたも自分だけの「動く城」を建造し、共に宅飲みのレベルをネクストステージへと引き上げましょう。
あなたのウイスキーライフに、乾杯。






