アイラモルトウイスキーといえば、強烈なスモーキーさとヨード香(イソジンのような)をあわせ持つ個性ある味わいを連想する方が多いのではないでしょうか。しかし、“アイラモルトの女王”の呼び名を持つ「ボウモア」は、その力強さの中に繊細な甘みやフルーティーさを秘めた味わいで有名です。今回ご紹介する「ボウモア 15年 ゴールデン&エレガント」は、まさにそんな一面を強く持つ、アイラモルトの新たな魅力を感じさせてくれる一本です。
「ボウモア 15年」の名を冠する銘柄には、通常ボトルの他に、今回紹介する免税店限定の「ボウモア 15年 ゴールデン&エレガント」があります。
- 穏やかなスモーキーさとフルーティーさ
- リンゴや柑橘、バナナ、アプリコットの甘いフルーティーさが強い
- 通常のボウモア 15年とは異なる味わい
記事の後半では、同じボウモアシリーズから「ボウモア 12年」、「ボウモア 15年」との比較もしています。ぜひ最後まで読んでいってください。
ボウモア 15年 ゴールデン&エレガントの基本情報・ストーリー
基本情報
銘柄 | ボウモア 15年 ゴールデン&エレガント |
原産国 | スコットランド(アイラ島) |
蒸留所 | ボウモア蒸留所 |
分類 | シングルモルト |
仕込み水 | ラーガン川 |
アルコール度数 | 43% |
主な熟成樽 | バーボン樽 |
所有者 | サントリーグローバルスピリッツ |
取扱い | サントリーホールディングス |
参考価格 | 約9,000~10,000円(1,000ml) |
ストーリー
免税店限定の特別なボウモア
ボウモア 15年 ゴールデン&エレガントは、スコットランド西岸沖に浮かぶアイラ島で最も古い歴史を持つボウモア蒸留所が手掛ける、免税店限定のシングルモルトウイスキーです。通常のラインナップとは異なる熟成方法を採用することで、ボウモアらしさを持ちながら、通常のボウモア 15年とは異なる味わいに仕上げられています。
ファーストフィルバーボン樽での熟成
ボウモア 15年はファーストフィルのバーボン樽とホグスヘッドの組み合わせによる熟成がおこなわれています。ファーストフィルとは、一度もウイスキーの熟成に使用されていない樽のことです。ここで間違ってはいけないのは、ファーストフィルバーボン樽とは一度もバーボンウイスキー以外の熟成には使われていない樽ということ。通常、アメリカンウイスキーであるバーボンウイスキーの熟成には内側を焦がした新樽のみ使用でき、バーボン熟成後はスコッチやジャパニーズウイスキー等、バーボン以外の熟成に再利用されます。
アメリカから樽を輸出する際に、樽はいったんバラバラに解体され、樽材を追加して胴回りを大きく組み直して貯蔵量を増やすことがあります。バーボン樽(バレル)は180~200リットルであるのに対し、ホグスヘッドは220~250リットル。ボウモア 15年 ゴールデン&エレガントは、バーボン熟成を終えた後ほかのウイスキー熟成に使われていない樽材を大きい容量に組み替えたファーストフィルバーボン・ホグスヘッドで熟成させているということです。
ファーストフィルのバーボン樽は、樽材の成分が原酒に溶出しやすい一方で、ホグスヘッドはバレルよりも樽材の影響が弱い。この二つの関係性を上手にコントロールして、ボウモア 15年 ゴールデン&エレガントは作れらているんですね。
ボウモア 15年の通常ボトルは、バーボン樽で12年熟成させたあと、シェリー樽で3年熟成させた、合計15年熟成。ボウモア 15年 ゴールデン&エレガントはファーストフィルバーボン樽で15年熟成させています。同じ15年熟成ボトルでもその内容は異なります。
ボウモア 15年 ゴールデン&エレガントのテイスティングレビュー・評価
ボウモア 15年 ゴールデン&エレガントの特性レーダーチャート
ボウモア 15年 ゴールデン&エレガントの特徴
コメント(ストレートでの評価 オススメ度:)
香り
スモーキーな香りとともに弱めの磯香がします。わずかに漬物のような酸臭がし、いぶりがっこを連想させます。
味わいと余韻
口に含んだ瞬間に、ミルクチョコ、バニラ、リンゴ、ほんのわずかに岩のりのような磯の風味がしました。スモーキーさはそれほど強くはありませんが最初から終盤まで感じることができます。少し遅れてバナナとアプリコットを足したような甘いトロピカルフルーツ、柑橘も。スモーキーさよりもフルーティーさが強く、また熟成感というよりも食べごろフルーツ盛り合わせの印象が強かったです。フルーティーさの内訳は、柑橘2:リンゴ1:バナナ1:アプリコット1といったイメージ。
アルコール刺激は、少し舌をピリピリと刺す程度です。15年熟成なのでほとんど刺激はないのではと思っていましたが、想像よりも刺激が強めだったので意外でした。
余韻はとても長く、僕の感覚で80秒ほど。口に含んだ瞬間から、ミルクチョコ、バニラ、リンゴ、スモーキーを感じ、その後すぐにバナナとアプリコット、柑橘の風味が追いかけてきます。リンゴとバナナ、アプリコットは40秒ほどで消えていきますが、チョコレートと柑橘は最後まで感じ取ることができ、スモーキーさも薄っすらとですが終盤までありました。
ボウモア 15年 ゴールデン&エレガントの飲み方別 オススメ度
飲み方 | オススメ度 |
---|---|
ストレート | 4 |
加水 | 5 |
オン・ザ・ロックス | 5 |
ハイボール | 5 |
ホットウイスキー | 5 |
加水 オススメ度:
数滴の加水で、フルーティーさが強まり、アルコール刺激は弱まり、味わいがととのった印象。もともと控えめなスモーキーさも落ち着きますが、非常に飲みやすくなりました。
オン・ザ・ロックス オススメ度:
スモーキーさとバニラ、味覚としての甘味が強まり、フルーティーさとアルコール刺激が弱まります。一般的に冷たいほど甘味は感じにくくなるのですが逆の結果に。
氷が溶けていってもバランスは崩れず、まったりとした甘さとスモーキーさがゆっくり楽しめます。
ハイボール オススメ度:
蜜のつまったリンゴ、程よいスモーキー、バニラ、クリーミーさのバランスが秀逸なフルーティー&スモーキーハイボールです。完熟フルーツ感が一段と強まった印象です。
頑張った一日の終り、自分へのご褒美に特別なハイボールを飲みたい方にはオススメです。
ホットウイスキー オススメ度:
優しい甘さと苦さ、バニラとクリーミーさの調和が楽しめるホットウイスキーです。
お湯を入れた直後は、木のホッコリする香りが強めでしたが、すぐに消えていき、バニラとクリーミーさが余韻にも残り続けました。
ボウモア 15年 ゴールデン&エレガントとボウモア 15年、ボウモア 12年との比較
同じボウモアシリーズから、「ボウモア 12年」と「ボウモア 15年」と飲み比べをしました。
色合いはボウモア 12年とボウモア 15年 ゴールデン&エレガントが同じ程度、ボウモア 15年は赤みがかった琥珀色です。同じ15年熟成でもかなりの違いがあります。
ボウモア 15年 ゴールデン&エレガントとボウモア 15年、ボウモア 12年との特性比較
ボウモア 15年 ゴールデン&エレガントとボウモア 15年、ボウモア 12年との特徴比較
これら2銘柄に絞った比較表を用意しました。
ボウモア 15年 ゴールデン&エレガント | ボウモア 15年 | ボウモア 12年 | |
---|---|---|---|
特性 | 熟成感はそれほど感じられないが完熟フルーティー | スモーキーさはそれほど目立たないが、縁の下の力持ちの役割。香り・味わいともに豊かで濃い。 | スモーキーながらも上品さがある。香り・味わいは豊かでバランスも良い。 |
特徴 | 〇スモーキー、ヨード香、潮の風味抑えめで、フルーティー 〇りんご、柑橘、バナナのフルーティーさ 〇ミディアムボディ | 〇スモーキー、ヨード香、潮の風味よりも他の風味が強い 〇レーズン、はちみつ、ダークチョコレートの風味 〇ミディアム寄りのフルボディ | 〇スモーキー、ヨード香、潮の風味は強め 〇柑橘フルーティー、はちみつ、華やかな花の風味 〇ミディアムボディ |
同じ15年熟成どうしで比較すると、「15年 ゴールデン&エレガント」は「15年」ほどの熟成感はありませんが、完熟フルーティーな風味が強く、まったくの別個性です。
ボウモア 12年との比較では、香り・味わいの豊かさや個性の強さ、調和を点数化した場合、大きな違いはありませんでした。アルコール刺激に関していえば「12年」のほうが少なく、まろやかで、改めてボウモアシリーズのベンチマークボトルである「12年」の完成度の高さを実感。ボディ感もほぼ同じでした。
3つの中では、「12年」がもっともアイラモルト独特のクセが強く、スモーキーでヨード香(イソジン系の風味)が楽しめます。「15年」はもっとも熟成感があり、味わい濃く複雑でドライフルーツ感が楽しめるフルボディタイプ。「15年 ゴールデン&エレガント」は完熟フルーツ感と控えめなスモーキーさとの調和が楽しめるでしょう。余韻の長さは「15年」と「15年 ゴールデン&エレガント」が同等でしたが、味わいの濃さ・深さの点で「15年」の方が余韻を楽しめます。
ボウモアシリーズには、エントリーボトルの位置付けで「ボウモア No.1」があります。これは「15年 ゴールデン&エレガント」と同様にファーストフィルバーボン樽で熟成させたシングルモルトで、こちらもフルーティーな特徴。「No.1」の味わいがお好きで、その長期熟成バージョンを飲んでみたい方は「15年 ゴールデン&エレガント」をオススメします。
「15年」と「15年 ゴールデン&エレガント」は価格が近いですが、「15年」は700ml、「15年 ゴールデン&エレガント」は1000mlと、容量に違いがあります。1ml当たりの価格は「15年」の方が高く、味わいにもそれ位の差があるな、というのが素直な感想。
感想・まとめ:濃厚なフルーツ感と穏やかなスモーキーさがたまらない
アイラモルトの女王“ボウモア”シリーズから、15年熟成ボトルの免税店限定品「ボウモア 15年 ゴールデン&エレガント」を紹介しました。長期熟成感があるというよりは、完熟した濃いフルーツの風味が魅力のボトルです。個人的に一番オススメなのはハイボール。完熟フルーツ感が一段と増して楽しめます。
通常のボウモア 15年の深く複雑な味わいを知っていて、同等の熟成感を求める方にとっては、正直なところ期待外れになってしまうでしょう。純粋に、スモーキーとフルーティーの濃度が高く、バランスがとれた飲みやすいアイラモルトとして選ぶのであれば間違いない一本です。
- 穏やかなスモーキーとフルーティーさがバランス良く楽しめるウイスキーをお探しの方
- ボウモアシリーズがお好きな方
- プレゼント用、自分へのご褒美用に予算1万円ほどのウイスキーをお探しの方