レビュー｜ブッシュミルズ 10年｜クリーミーでなめらかなフルーティーシングルモルト

アイリッシュウイスキーはそのスムースな飲み口と豊かなフレーバーでウイスキー愛好家を魅了しています。中でもブッシュミルズ は、その代表格として有名な銘柄。そんなブッシュミルズシリーズの中で、「ブッシュミルズ 10年」はシングルモルトウイスキーの入門編としても高い人気を誇ります。本記事では、ブッシュミルズ 10年の魅力と特徴、楽しみ方について深く掘り下げていきます。

記事の後半では、同じブッシュミルズシリーズの「ブラックブッシュ」、当ブログの基準シングルモルトウイスキーである「ザ・グレンリベット 12年」との比較もしています。ぜひ最後まで読んでいってください。

ブッシュミルズ 10年の基本情報・ストーリー

基本情報

銘柄	ブッシュミルズ 10年
原産国	アイルランド
蒸留所	ブッシュミルズ蒸留所
分類	シングルモルト
仕込み水	セント・コロンパの泉
主な熟成樽	バーボン樽、シェリー樽
アルコール度数	40%
所有者	ホセ・クエルボ
取扱い	アサヒビール
参考価格	3,500～5,000円

概要

400年以上の歴史、世界最古の蒸留所

ブッシュミルズ蒸留所は、1608年にウイスキー製造免許を正式に受けた、記録上世界最古の蒸留所と言われています。北アイルランドのアントリム州、ブッシュ川のほとりに位置し、400年以上にわたり、その伝統的な製法を守り続けてきました。ブッシュミルズは、ブッシュ川の水源であるセント・コロンパの泉から直接、水を引き入れて仕込み水にしています。

アイリッシュウイスキーの大きな特徴の一つに「3回蒸留」があります。多くのスコッチウイスキーが2回蒸留であるのに対し、3回蒸留を行うことで、より雑味が少なく、軽やかでスムースな味わいが生まれます。また、ブッシュミルズでは伝統的にノンピート麦芽（ピートを焚かずに乾燥させた麦芽）を使用しているため、スモーキーな香りがほとんどなく、麦芽本来の風味が生きたクリーンな味わいが特徴です。

バーボン樽とシェリー樽による10年以上熟成

ブッシュミルズ 10年は、ブッシュミルズ蒸留所が手がけるシングルモルトウイスキーのラインナップの中でも、最もスタンダードで広く親しまれている銘柄です。100%アイルランド産ノンピート大麦麦芽のみを使用し、伝統の3回蒸留を経て原酒がつくられます。主にアメリカンオークのバーボン樽熟成原酒が使われていますが、一部シェリー樽熟成原酒も使用され、バーボン樽はバニラのような風味を、シェリー樽はドライフルーツのような風味をもたらし、これらの樽で熟成された原酒をヴァッティング（混合）することで、バランスの取れた豊かな味わいが生まれます。また、最低10年という熟成期間が、原酒にまろやかさと深みを与えます。

ブッシュミルズ 10年のテイスティングレビュー・評価

ブッシュミルズ 10年の特性レーダーチャート

ブッシュミルズ 10年の特徴グラフ

コメント（ストレートでの評価　オススメ度：）

香り

開栓直後は、穀物、草のニュアンスが強く、ブドウやリンゴなどフレッシュなフルーツを弱めに感じました。開栓から数日経つと、はちみつの風味が目立ち始め、フレッシュフルーツはバナナやパイナップルといったトロピカルフルーツのような香りに変化しました。

味わいと余韻

開栓直後は、モルト由来の穀物の甘い風味、フルーティーなのは確かだけどなんのフルーツかは特定しにくいといった印象でした。時間経過とともに味わいが“開き”、前半はバナナ、すぐに消えて白ブドウとリンゴを足して２で割ったようなフルーティーさが現れ、バニラとはちみつは感じられるものの弱く、はちみつは余韻の後半で感じやすかったです。そしてさらに時間が経って“開いて”安定した味わいが、上図の通り。

モルト由来の穀物の優しい甘さ、はちみつ、花のような華やかさ、バニラ、パイナップル感が強いトロピカルフルーツを感じるようになりました。風味は優しい甘さが強い一方で、舌で直接感じる苦味もあります。この苦味に伴って、若干の柑橘も感じるような感じないような。

余韻はやや長く、僕の感覚で60秒程度。口に含んですぐに穀物、華やかさ、はちみつ、バニラ、トロピカルフルーツが感じられます。トロピカルフルーツは早めに消えていき、続いてバニラが消えていき、穀物と華やかさ、はちみつは最後まで感じることが出来ました。

ブッシュミルズ 10年の飲み方別 オススメ度

飲み方	オススメ度
ストレート	5
加水	5
オン・ザ・ロックス	4
ハイボール	5
ホットウイスキー	2

加水　オススメ度：

オン・ザ・ロックス　オススメ度：

ハイボール　オススメ度：

ホットウイスキー　オススメ度：

ブッシュミルズ 10年とブラックブッシュ、ザ・グレンリベット 12年との比較

同じブッシュミルズシリーズから、シェリー樽原酒が使われている「ブラックブッシュ」、当ブログの基準シングルモルトウイスキー「ザ・グレンリベット 12年」と飲み比べしました。

ブッシュミルズ 10年とブラックブッシュ、ザ・グレンリベット 12年との特性比較

ブッシュミルズ 10年とブラックブッシュ、ザ・グレンリベット 12年との特徴比較

これら3銘柄の比較表を用意しました。

	ブッシュミルズ 10年	ブラックブッシュ	ザ・グレンリベット 12年
特性	まろやかでスムース、洗練された飲み口	まろやかでスムースな飲み口	香り・味わいともに豊かでまろやかにまとまっている
特徴	〇モルト由来の穀物やはちみつの甘さ 〇スモーキーさはほとんどない 〇ライト寄りのミディアムボディ	〇シェリー樽由来のドライフルーツ 〇スモーキーさはほとんどない 〇ライト寄りのミディアムボディ	〇穀物やバニラやはちみつ等の甘さが強く、華やかさがある 〇スモーキーさはほとんどない 〇クリーミーでコクがあるミディアムボディ

ここで比較した3銘柄は、どれもフルーティーで甘いタイプのウイスキーです。

モルトの優しく甘い風味で比較すると、ブッシュミルズ 10年＞ザ・グレンリベット 12年＞ブラックブッシュ。

フルーティーさで比較すると、ザ・グレンリベット 12年＞ブッシュミルズ 10年＞ブラックブッシュ。

ドライフルーツで比較すると、ブラックブッシュ＞ザ・グレンリベット 12年＞ブッシュミルズ 10年　となります。

ブラックブッシュはアイリッシュブレンデッドウイスキーですが、その構成は、オロロソシェリー樽とバーボン樽で最長7年熟成させたモルト原酒を80％以上使用し、実はほぼモルトウイスキーです。ブッシュミルズ 10年とブラックブッシュは、どちらもまろやかでスムースな飲み口で、比較するとブッシュミルズ 10年の方が豊かなフルーティーさがあります。シェリー樽由来のドライフルーツを楽しみたいという方はブラックブッシュがオススメです。

スコッチシングルモルトのザ・グレンリベット 12年は3銘柄中もっとも濃厚で味わい豊かです。シングルモルト入門の一本として強くオススメできますが、ストレートでクセがなく飲みやすいボトルとしてはブッシュミルズ 10年もシングルモルト最初の一本にはオススメです。

感想・まとめ：クセがないから、すいすい飲めてしまうシングルモルト

アイリッシュウイスキーの定番、ブッシュミルズから「ブッシュミルズ 10年」を紹介しました。アイリッシュウイスキーの特徴である3回蒸留によるスムースな飲み口、華やかな香り、そしてバランスの取れた味わいは、シングルモルト入門の一本としてもオススメできます。ノンピート麦芽由来のクリーンな味わいは、ウイスキーを飲み慣れていない方や、スモーキーなタイプや個性的なものは少し苦手…という方にも最適な選択肢となるでしょう。