ぱっと見「角瓶」に間違いないのですが、なんだか少し違和感があるラベルの「角瓶 復刻版」の紹介です。1937年発売当時の味わいを再現したものということで、どんな味わいか気になる方も多いのではないでしょうか。
角瓶といえば亀甲模様の独特なデザインボトルと黄色いラベルが印象的です。今回紹介する角瓶 復刻版はボトルは同じですがラベルの色が現行ボトルよりも淡いクリーム色の見た目で「これは角瓶だ」とわかる外観です。しかしその味わいはというと、今の角瓶とは別物です。
- 1937年当時の日本人向けに品質設計された味わい。
- 現行角瓶にはないドライフルーツ感と華やかさ。
- ハイボールよりもオン・ザ・ロックスやホットウイスキーがオススメ。
記事の後半では現行品の角瓶との比較もしています。ぜひ最後まで読んでいってください。
角瓶 復刻版の基本情報・ストーリー
基本情報
銘柄 | サントリー角瓶 復刻版 |
原産国 | 日本 |
分類 | ブレンデッド |
キーモルト | |
アルコール度数 | 43% |
所有者 | サントリースピリッツ |
取扱い | サントリーホールディングス |
参考価格 | 1,900~2,500円 |
ストーリー
サントリーの前身である寿屋は山崎蒸溜所で1924年からウイスキー製造を開始し、1929年には「白札」を、1930年には価格を下げて普及用とした「赤札」を発売しました。しかし当時の大衆には高価であり、またスモーキーフレーバーにも馴染みがなかったことから支持を得ることはできませんでした。
この後寿屋は資金難にも見舞われましたが、サントリー創業者にして不屈の男・鳥井信治郎氏の掲げた「日本人の繊細な味覚に合うスコッチに負けない日本のウイスキーづくり」は1937年発売の「サントリーウイスキー12年もの」の完成によって見事に達成されました。
「サントリーウイスキー12年もの」こそが「角瓶」のことなのです。大衆からの支持を得たことで、亀甲カットが入った角型のボトルから「角瓶」の愛称が定着しました。その後1950年代に「サントリー角瓶」の名称が採用されました。
現行品のラベルはかなりシンプルですが、復刻版は文字数が多いです。発売当時の社名である“KOTOBUKIYA LTD”の文字がまさに復刻版といった感じです。
肩ラベルには“AT YAMAZAKI NEAR KYOTO”の文字があります。現在の角瓶は山崎・白州蒸溜所のバーボン樽原酒を使用してますが、発売当時は山崎蒸溜所のみの稼働でしたので山崎蒸溜所モルト原酒とグレーン原酒のブレンドでした。
角瓶 復刻版が最初に発売されたのは2009年のことです。横浜開港150周年記念で神奈川県限定商品として数量限定で発売されました。その後2015年にも容量450mlで数量限定生産されています。2009年、2015年に発売された復刻版を手に入れることは困難ですが、今でも少量生産・流通していてネット通販で入手可能です。
日本では2017年に食品表示基準が改正・施行され、原料原産地表示をすることが義務付けられました(基本的にはもっとも配合量の多い原料に対しての原産地のみ)。経過措置期間(猶予みたいなもの)は2022年3月までで、それまでの間に各メーカーはラベル表示の変更に対応しなければなりませんでした。
復刻版の裏ラベルの表示を確認してみると、きちんと原料原産地表示がされています。数年前の記憶ではサントリー角瓶(現行品)やその他のウイスキーも原料原産地表示はされていませんでしたので、ここ最近ラベル表示の変更があったことがわかります(仕事柄、この新制度の対応業務もしていましたのでしょっちゅう原料表示を確認してました)。ということで、いまでも少量ですが生産されていることがわかります。
復刻版は、サントリーで保管されている発売当時のボトルをブレンダーがテイスティングしその味わいを再現しました。現行品のアルコール度数は40%ですが復刻版は43%と高く、それだけでも現行品よりも濃い味わいであることが想像できます。また、サントリー創業者でありマスターブレンダーだったレジェンド・鳥井信治郎氏の想いが込められた元祖・角瓶ともいえるウイスキーがいまでも飲めるということは嬉しいですね。
角瓶 復刻版のテイスティングレビュー・評価
角瓶 復刻版の特性レーダーチャート
角瓶 復刻版の特徴
コメント(ストレートでの評価 オススメ度:)
香り立ちはブレンデッドウイスキーにしてはしっかりしています。まず少し酸味をともなったような木樽を感じ、バニラやドライフルーツのようなどっしりとした甘い香りが続きます。控えめですがスモーキーな香りもします。
口に含むとレーズンと蜜がつまったリンゴを強く感じ、同時にスモーキーさがあります。余韻には木樽とカラメル、カスタードクリームが感じられます。華やかさと甘さのバランスが良く、飲みごたえのあるミディアムボディのウイスキーです。
もとは「サントリーウイスキー12年もの」の名を冠していたことに納得のいく味わいで、12年もののスコッチブレンデッドウイスキーと比べても負けていません。
むしろジョニ黒やバランタイン12年よりも濃く深い味わいが楽しめるのではないでしょうか。
角瓶 復刻版の飲み方別 オススメ度(5段階)
飲み方 | オススメ度 |
---|---|
ストレート | 4 |
加水 | 4 |
オン・ザ・ロックス | 5 |
ハイボール | 3 |
ホットウイスキー | 5 |
加水 オススメ度:
チョコレートの風味が現れました。アルコール刺激が弱まりまろやかになります。飲みやすくなりましたが、少し味わいがぼやけて感じました。
オン・ザ・ロックス オススメ度:
軽めの甘さと苦さが引き立ちます。チョコレートと穀物の甘味があって後からぶどうのようなフルーティーさが楽しめます。苦味も不快ではなく心地良い苦味です。
ストレートとはだいぶ印象が変わりました。
ハイボール オススメ度:
はちみつと穀物の甘さがあり、ほのかな苦味とのバランスがよいフルーティーなハイボールです。
とても飲みやすくておいしいのですが、他の飲み方と比べるとやや平坦な香りと味わいに感じます。
ホットウイスキー オススメ度:
ウイスキー:お湯=1:2がオススメです。
程よいスモーキーさとバニラ・はちみつ・カラメル・かすかにチョコレートといった甘さがとても心地良いです。
角瓶(現行品)との比較
やはり外すことができない現行品の角瓶との比較です。色合いは復刻版のほうが濃い琥珀色です。
角瓶 復刻版と角瓶(現行品)の特性比較
角瓶 復刻版と角瓶(現行品)の特徴比較
この2銘柄に絞った比較表も用意しました。
角瓶 復刻版 | 角瓶 現行品 | |
---|---|---|
特性 | 味わい豊かで深みがある | クリーンで万人受けする |
特徴 | ・レーズンやリンゴの風味がある ・スモーキーさが感じられる ・ミディアムボディ | ・まろやかなオイリーさがある ・際立った特徴は少ないがまとまりがある ・ライトボディ |
香りの時点でまったく別のウイスキーのように感じます。現行品はライトであまり特徴はない中に弱めですがオイリーさとはちみつの甘さを感じ、スモーキーさはほとんどありません。一方で復刻版は味わい豊かでレーズンやリンゴの風味とスモーキーさが楽しめるミディアムボディです。味わいについても別物であり、角瓶は時代に合わせてその時の人々に好まれるように変化してきたことがわかります。
また、現行品はダントツでハイボールで飲むことをオススメしますが、復刻版はストレートやオン・ザ・ロックス、ホットウイスキーがおいしかったという違いも面白いです。
感想・まとめ:味わい深い角瓶を飲んだことのない方にはぜひオススメしたい
12年もののブレンデッドウイスキーに匹敵もしくはそれ以上の実力をもった「角瓶 復刻版」を紹介しました。現行品の角瓶の味わいを想像して復刻版を飲むとあまりの違いに驚く方が多いでしょう。
ドライフルーツ、フルーティー、スモーキーが絶妙なバランスでした。
- サントリー角瓶を愛する方
- 角瓶の歴史に思いをはせて楽しみたい方
- ジャパニーズブレンデッドウイスキーで味わい豊かなものをお探しの方
限定品はネットでプレミア価格になってしまうことが多いですが、角瓶 復刻版は定期的に生産されているためか安定価格で購入できます。