ニッカウヰスキーの創業者の名を冠するウイスキー「竹鶴ピュアモルト」。ニッカウヰスキーが誇る余市蒸留所と宮城峡蒸溜所のモルト原酒のみをブレンドしたブレンデッドモルトウイスキーです。マッサンこと竹鶴政孝のウイスキーづくりに対する熱い想いが受け継がれ完成した竹鶴ピュアモルトは、数々のウイスキーファンを魅了し続けています。
この記事では、「竹鶴ピュアモルト」の詳しい味わい、オススメの飲み方まで徹底的にレビューしていきます。
らまずっとプレミア価格でしたが、最近になってやっと落ち着いてきた印象です。Amazonでも希望小売価格より少しだけ高い価格で流通しはじめましたね。
- まろやかでどんな飲み方も楽しめるブレンデッドモルトウイスキー
- 華やかでフルーティー、余市原酒と宮城峡原酒が見事に調和
- ノンエイジ(熟成年数表記なし)とは思えない複雑さと飲みやすさ
記事の後半では、同じニッカウヰスキーのシングルモルト「シングルモルト宮城峡」と「シングルモルト余市」との比較もしています。余市蒸溜所と宮城峡蒸溜所のモルト原酒は、竹鶴ピュアモルトの構成原酒でもあります。ぜひ最後までご覧ください。
竹鶴ピュアモルトの基本情報・概要
基本情報
| 銘柄 | 竹鶴ピュアモルト |
| 原産国 | 日本 |
| 分類 | ブレンデッドモルト |
| 主要モルト | 余市蒸溜所モルト原酒、宮城峡モルト原酒 |
| 主な熟成樽 | バーボン樽、シェリー樽、新樽 |
| アルコール度数 | 43% |
| 所有者 | ニッカウヰスキー |
| 取扱い | アサヒビール |
| 参考価格(税込) | 7,700円 |
概要
すべての始まりは、一冊のノートから
「竹鶴」の歴史は、ニッカの創立よりもさらに遡る1918年、竹鶴政孝の単身渡英から始まります。
当時の日本には「本物」のウイスキーは存在せず、アルコールに香料を混ぜた模造酒(三級ウイスキー)が主流でした。政孝は、本場の技術を学ぶためスコットランドへ渡り、グラスゴー大学で化学を学びながら、複数の蒸溜所で実地修行を積みます。
そこで彼が書き留めたのが、後に日本のウイスキー造りのバイブルとなる「竹鶴ノート」です。



2025年12月22日より、竹鶴政孝とその妻リタがモデルとなった連続テレビ小説「マッサン」が再放送されています。
理想の地、余市への到達:ニッカウヰスキーの誕生
帰国後、寿屋(現サントリー)での山崎蒸溜所建設を経て、政孝は1934年、自らの理想を追求するために独立します。彼が選んだのは、スコットランドのハイランド地方に似た冷涼な気候と、良質な水、そして石炭とピート(泥炭)が手に入る北海道の余市でした。
ウイスキーは蒸溜してから熟成に数年かかるため、すぐには利益が出ません。そこで政孝は、まず「大日本果汁株式会社」を設立し、地元のリンゴを使ったジュースを販売して資金源としました。
1940年にようやく発売された第一号のウイスキーは、社名から「日」と「果」をとった「ニッカウヰスキー」と名付けられ、特別な意味を持つことになったのです。
第二の蒸溜所、宮城峡:余市と異なる原酒づくりを目指して
余市でのウイスキー造りが軌道に乗った後も、政孝には一つの大きな課題がありました。それは、ブレンディングの幅を広げることです。
ウイスキーには、力強い個性を持つモルト原酒だけでなく、それらをまとめ上げ、華やかさや奥行きを与える別の個性の原酒が必要だと彼は考えていました。
- 余市(1934年〜): 石炭直火蒸溜による、力強くスモーキーなモルト。
- 宮城峡(1969年〜): 蒸気間接蒸溜による、華やかで柔らかなモルト。
1969年、宮城県の広瀬川と新川が合流する地に、第二の蒸溜所として「宮城峡蒸溜所」が完成しました。これにより、ニッカは性格の異なる二つのモルトを手に入れ、理想のブレンディングを実現する土台を完成させたのです。
「竹鶴」の誕生:創業者の名を冠する覚悟
政孝の没後、ニッカウヰスキーはその技術を継承し、磨き続けてきました。そして2000年、満を持して発売されたのが「竹鶴12年ピュアモルト」です。
通常、複数の蒸溜所の原酒を混ぜる場合、飲みやすさを重視して「グレーンウイスキー」を加えた「ブレンデッドウイスキー」にするのが一般的でした。しかし、あえて「モルト100%」にこだわったのは、政孝が愛した「余市」と「宮城峡」という二つのモルトが持つ可能性を、最大限に表現したかったからです。
2020年のリニューアルと現在
ノンエイジの竹鶴ピュアモルトが発売されたのは、さらに時が経った2013年のこと。その後、世界的なウイスキーブームと原酒不足を経て、2020年には現在の形へとリニューアルされました。
現在の竹鶴ピュアモルトは、シェリー樽熟成した余市モルト・宮城峡モルトと、リメード樽熟成した宮城峡モルトがキーモルトとして使われています。シェリー樽はレーズンやチョコのような深い甘さを、リメード樽はバニラやフレッシュな木樽のニュアンスを付与します。
※リメード樽(再組替樽)とは、一度使用した樽を解体し、樽の上下の蓋を新材に交換したり内側を強く焼く(チャー)ことで、樽の成分を再び活性化させた樽のこと。



「WWA(ワールド・ウイスキー・アワード)」では、2023年にワールド・ベスト・ブレンデッドモルトウイスキーを受賞。世界最高賞のブレンデッドモルトウイスキーに認定されています。
竹鶴ピュアモルトの特性レーダーチャート


竹鶴ピュアモルトの特徴グラフ
コメント(ストレートでの評価 オススメ度:)


香り
フレッシュなリンゴと熟した洋梨のような果実香を強く感じます。他にも、柔らかい印象の樽香や、奥の方にわずかにスモーキーさも感じられます。アルコールの刺激はなく、香りからはまろやかな印象を受けます。
味わいと余韻


口に含んでみると、華やかさが強く、爽やかさと熟した両方のフルーティーさが共存しています(爽やかさの方がやや強め)。フルーティーの内容としては、爽やかなリンゴ、スウィーティー(爽やか+フレッシュな甘さとグレープフルーツのようなほろ苦さの柑橘)とともに濃厚なトロピカルフルーツが感じられます。香りで感じていた洋梨は味わいではそれほど強くありませんでした。
味覚としての甘味はそれほど強くないものの、甘い風味がとても強く、フルーティー以外にも穀物の優しい甘さや甘栗、バニラの風味があります。飲みこんだ後に鼻の奥でわずかに芳ばしいスモーキーさもす。アルコール刺激はかなり少なく、ストレートで飲みやすいでしょう。
様々な香味が強調せずに、互いを打ち消すことなく絶妙なバランスで存在しているといった印象です。



シングルモルト余市やシングルモルト宮城峡よりもプレミア価格になってしまう訳がわかる、非常に完成度の高いブレンデッドモルトウイスキーです。優しく、まろやかで複雑な味わいが楽しめます。ブレンダーの高い技術を感じさせますね。
余韻は長く、僕の感覚で90秒程度。口に含んですぐにリンゴ、洋梨、トロピカルフルーツ、穀物、柑橘、うっすらとバニラが口内を満たし、やや遅れて甘栗が訪れます。フルーツ系の風味は前半で消えていき、穀物や甘栗が長く続きました。
竹鶴ピュアモルトの飲み方別 オススメ度
| 飲み方 | オススメ度 |
|---|---|
![]() ![]() ストレート | 5 |
![]() ![]() 加水 | 5 |
![]() ![]() オン・ザ・ロックス | 5 |
![]() ![]() ハイボール | 5 |
![]() ![]() ホットウイスキー | 5 |
加水 オススメ度:


数滴の加水で、よりフルーティーで華やか、まろやかで優しい味わいになります。甘くコクのあるフルーツ感が増し、特にメロンを感じるようになりました。
オン・ザ・ロックス オススメ度:


特にオススメの飲み方がオン・ザ・ロックスです。
甘さが引き立ち、熟したフルーティーに。加水で爽やかメロンだった風味が、完熟メロンのようになりました。苦味は目立たず、時間が経っても味わいが崩れないので、まったりと楽しむことができます。
ハイボール オススメ度:


華やかでクリーミーなハイボールです。ほのかにですが、鼻から抜けるマロングラッセの風味に幸せを感じてしまいます。フルーティーというより華やかで、飲みやすく、グビグビと一瞬で飲み干したくなる味わいです。
ホットウイスキー オススメ度:


ウイスキー:お湯=1:2の濃いめでつくりました。
華やか+スモーキーなホットウイスキーです。スモーキーさは弱いですが、もっともスモーキーさを感じ取れる飲み方です。
とても柔らかく優しい甘さと温かさの組み合わせがたまりません。弱めですがマロンクリームのモンブランのような風味も楽しめます。わずかに酸味がでますが、バランスは崩れません。
竹鶴ピュアモルトとシングルモルト余市、シングルモルト宮城峡との比較


同じニッカウヰスキーの「シングルモルト余市」、「シングルモルト宮城峡」と飲み比べしました。
竹鶴ピュアモルトとシングルモルト余市、シングルモルト宮城峡との特性比較


竹鶴ピュアモルトとシングルモルト余市、シングルモルト宮城峡との特徴比較
これら3銘柄の比較表を用意しました。
| 竹鶴ピュアモルト | シングルモルト余市 | シングルモルト宮城峡 | |
|---|---|---|---|
| 特性 | 優しくまろやかで華やか、バランスが取れた味わい | 力強く複雑で、フルーティー&スモーキーな味わい | エレガントで爽やかフルーティーな味わい |
| 特徴 | 〇リンゴ、洋梨、柑橘、甘栗、バニラ 〇わずかに芳ばしいスモーキーさ 〇ミディアムボディ | 〇加熱したリンゴ、バニラ、チョコレート、桃、柑橘 〇焚火+焦げのスモーキーさ 〇フルボディ寄りのミディアムボディ | 〇リンゴ、洋梨、バニラが強い 〇弱めだが焚火のようなスモーキー 〇ミディアムボディ |
3銘柄を飲み比べてみて、竹鶴は確かに余市と宮城峡の要素がバランス良くブレンドされていると感じました。しかしそれだけではなく、甘栗のようなまったりとした甘い要素もあり、余市や宮城峡単体にはない魅力的な味わいもあります。
アルコール濃度は竹鶴が43%、余市と宮城峡は45%なので、もちろん余市と宮城峡の方がアルコール刺激は強いのですが、2%しか違いのない竹鶴はその差以上に刺激が少なく、非常にまろやかに感じられました。
個性という面においては、余市の力強いフルーティー&スモーキーや宮城峡のエレガントなフルーティーさに軍配が上がりますが、竹鶴の調和の取れた優しくまろやかな味わいも非常に魅力的です。



3本買い揃えるとなると大きな出費ですが、この3本はぜひ同時に飲み比べして楽しんでほしいです。
感想・まとめ:竹鶴政孝の夢が溶け込んだ一本
ニッカウヰスキー創業者:竹鶴政孝の夢であった「自らが学んだスコットランドのように別々の蒸溜所で個性の違うモルト原酒を生み出す」ことが余市蒸溜所と宮城峡蒸溜所によって実現しました。その後、政孝の想いを継いだブレンダー達によって「竹鶴ピュアモルト」が誕生。
竹鶴ピュアモルトは余市蒸溜所と宮城峡蒸溜所のモルトの風味を存分に引き出し、まとめあげられた高品質な味わいです。普段からウイスキーを飲まれている方だけでなく、ウイスキー初心者の方にも一度は飲んでほしい一本です。
- 単一の個性(シングルモルト)ではなく、複数の個性が調和した複雑な味わいを好む人
- 余市モルトと宮城峡モルトのブレンドによる最高峰の味わいを試したい人
- 入手困難であっても、その価値に見合う「特別な一本」を探している人











