レビュー｜キリンウイスキー 陸｜味わいふくよかリーズナブル、キリンのこだわり

「キリンウイスキー 陸」は、キリンの富士御殿場蒸溜所で作られた、多彩な原酒をブレンドしたブレンデッドウイスキーです。富士御殿場蒸溜所は、ウイスキーづくりに理想的な条件：富士山の伏流水・冷涼な気候・霧がもたらす湿度が揃っている、キリンのウイスキーづくりの拠点。キリンのこだわりと自然が育んだリーズナブルで入手しやすいウイスキー、それが「陸」です。

記事の後半では、日本のウイスキーで同価格帯の「サントリー 角」、「ブラックニッカ スペシャル」とのテイスティング比較もしています。ぜひ最後まで読んでいってください。

キリンウイスキー 陸の基本情報・ストーリー

基本情報

銘柄	キリンウイスキー 陸
原産国	日本
蒸留所	富士御殿場蒸溜所
分類	ブレンデッド
仕込み水	富士山の地下水（伏流水）
アルコール度数	50％
所有者	キリンディスティラリー
取扱い	キリンホールディングス
参考価格	約1,300~1,900円

ストーリー

霊峰「富士山」の地下水（伏流水）が仕込水

キリンウイスキー 陸は、キリンディスティラリーが富士御殿場蒸溜所でつくるブレンデッドウイスキーです。富士御殿場蒸溜所（1973年操業）は、富士山の麓、海抜630mの年平均気温13度という冷涼な地に建っています。キリンのウイスキーづくりに欠かせないのが、富士山麓の地下深くを流れる地下水（伏流水）。長い年月をかけて地層を通り抜けることで、不純物が取り除かれたこの水は、まさに自然の恵み。また、一年を通して霧が発生しやすい地であることによる湿潤な気候も加わって、富士御殿場蒸溜所はウイスキーづくりに理想的な環境なのです。

陸がアルコール度数50°のワケ

一般的に、ウイスキーはアルコール度数60°前後で樽詰めして熟成させ、熟成後にアルコール度数を40°前後まで加水し瓶詰めします。長い年月をかけてウイスキー原酒中に溶出した樽由来成分の中には、高濃度アルコールだからこそ溶けている成分、ある程度の液温までなら溶けていて低温になると析出してしまう成分があります。これが瓶詰め後に濁りとなってウイスキーの液中に見えるようになると、見た目の問題で消費者からのクレームにつながってしまいます。この濁り対策として、加水後に冷却して析出した成分をろ過して取り除く冷却ろ過（チル・フィルタレーション）という工程がとられます。キリンウイスキー 陸では、この冷却ろ過を行わないことで、ウイスキー本来の味わいが楽しめるように製造されています。（ノンチルフィルタード）

富士御殿場蒸溜所は操業当初から多様なウイスキー原酒をつくり分けています。モルトウイスキーとグレーンウイスキーをひとつの蒸溜所で製造すること自体あまり類を見ないことなのですが、グレーンウイスキーに関しては3つものタイプをつくり分けています。

「キリンウイスキー 陸」では、富士御殿場蒸溜所の多彩な原酒を主体に、厳選した輸入原酒もブレンドされています。原酒はアルコール度数50°で樽詰めして熟成。使われる樽材は北米産のホワイトオーク、容量180リットルの樽（バレル）で熟成されます。小容量の樽熟成のメリットとして、原酒と樽の触れ合う表面積が大きくなり、木樽の豊かな香りをふんだんに得ることができます。また、50°で熟成させることで、樽から甘く香ばしい風味が溶け出しやすいということがわかっているそうです。

陸のアルコール度数が50°と高めに設定されているのは、熟成後の原酒にほとんど加水することなく冷却ろ過もしないことで、香味成分を除去せず、“樽出し”原酒本来の味わいが楽しめるように品質設計されているというわけです。

キリンウイスキー 陸のテイスティングレビュー・評価

キリンウイスキー 陸の特性レーダーチャート

キリンウイスキー 陸の特徴

コメント（ストレートでの評価　オススメ度：）

香り

甘くクリーミーなバニラ、華やかさ、チョコレートが感じ取れます。少しアルコールの刺激も。

味わいと余韻

口に含んでみると、バニラ、弱めの甘い柑橘（ネーブルオレンジ）、加熱された甘酸っぱいリンゴ、穀物、苦味、華やかなエステリーさ、わずかに焦げのスモーキーさが感じられます。加熱されたリンゴと穀物の組み合わせはアップルパイのようにも感じ取れました。味覚としての甘味は強めで、苦味もあることで飲み飽きしない味わいに。

余韻はやや長めで、僕の感覚で50秒ほど。口に含んだ瞬間から、バニラ、ネーブルオレンジ、アップルパイ、チョコレート、エステリーな華やかさを感じ取れ、チョコレートは早めに消えていき、その後華やかさとバニラが消えていきます。ネーブルオレンジとアップルパイの風味はそれほど強くありませんが、終始感じることができました。

キリンウイスキー 陸の飲み方別 オススメ度

飲み方	オススメ度
ストレート	4
加水	4
オン・ザ・ロックス	5
ハイボール	5
ホットウイスキー	5

加水　オススメ度：

オン・ザ・ロックス　オススメ度：

ハイボール　オススメ度：

ホットウイスキー　オススメ度：

キリンウイスキー陸とサントリー角、ブラックニッカスペシャルとの比較

同じく日本のブレンデッドウイスキーで、ウイスキーメーカー大手同士の比較です。サントリー 角とブラックニッカ スペシャルと飲み比べしました。

色合いにはそれほど違いはありませんでした。

キリンウイスキー陸とサントリー角、ブラックニッカスペシャルとの特性比較

キリンウイスキー陸とサントリー角、ブラックニッカスペシャルとの特徴比較

これら3銘柄に絞った比較表を用意しました。

	キリンウイスキー 陸	サントリー 角	ブラックニッカ スペシャル
特性	クリーンな味わいであり、華やかで力強さもある	香り・味わいともに軽く、クリーンで万人受けする	個性が感じられ、濃さがある
特徴	〇クリーン＆エステリー 〇甘味と苦味が強めでバランス良い、バニラ強め 〇ミディアムボディ	〇まろやかなオイリーさがある 〇際立った特徴は少ないがまとまりがある 〇ライトボディ	〇穀物やリンゴ系のフルーティーさやバニラ等の甘味 〇コクにもつながる苦味と渋味が少しある 〇ライトボディ

サントリー 角はウイスキーの風味としては薄めですが、万人受けするバランスの良さがあり、ブラックニッカ スペシャルはリンゴのような爽やかなフルーティーさと控えめバニラ、わずかなスモーキーさがあります。

キリンウイスキー 陸はもっとも甘味・苦味が強く、華やかさとバニラの風味、わずかにアップルパイやネーブルオレンジのニュアンスが楽しめます。

感想・まとめ：甘くクセの少ない飲みやすさ、ウイスキー初心者にもオススメ

キリンの富士御殿場蒸溜所でつくられる、リーズナブルなブレンデッドウイスキー「キリンウイスキー 陸」を紹介しました。甘さが主体でクセの少ない味わい、甘さの中にはバニラをはじめとした複雑な風味がありふくよか、比較的リーズナブルでコスパの良いウイスキーでした。食中酒としても楽しめるでしょう。