「ザ・バルヴェニー 12年 ダブルウッド」は「ダブルウッド」を冠するとおり、2種類の樽熟成を経た原酒が絶妙に調和したウイスキーです。バルヴェニー蒸留所は、スコッチシングルモルトウイスキーの売上で世界No.1であるグレンフィディックと同じ敷地内にある姉妹蒸留所。グレンフィディックとの香り・味わいの違いなど気になりませんか?
ベージュ色の筒箱とラベル、そこに記されているシンプルな文字の表現が伝統と重厚さを感じさせます。
- 穀物や華やかな花、はちみつなどの甘い風味が強い。
- 余韻が長く、飲み口が優しく、風味の変化が楽しめる。
- シングルモルト12年ものとしては高価格だが、しっかりと満足感がある。
記事の後半ではグレンフィディック12年とザ・グレンリベット12年との比較もしています。ぜひ最後まで読んでいってください。
ザ・バルヴェニー 12年 ダブルウッドの基本情報・ストーリー
基本情報
銘柄 | ザ・バルヴェニー 12年 ダブルウッド |
原産国 | スコットランド(スぺサイド) |
蒸留所 | バルヴェニー蒸留所 |
分類 | シングルモルト |
仕込み水 | コンヴァルヒルの泉の湧水 |
アルコール度数 | 40% |
主な熟成樽 | バーボン樽、ホッグスヘッド、シェリー樽 |
所有者 | ウィリアム・グラント&サンズ社 |
取扱い | サントリースピリッツ |
参考価格 | 約6,500~7,500円 |
ストーリー
バルヴェニーは、グレンフィディック創業5年後の1892年に、ウィリアム・グラントによって建てられたグレンフィディックの姉妹蒸留所です。場所はグレンフィディックと隣接し、もとはバルヴェニーハウスという領主の館だった建物を蒸留所に改造。
“バルヴェニー”は蒸留所近隣にある古城(廃城)の名前で、ゲール語で「山の麓の集落」を意味します。グレンフィディックと同じ敷地内、同じ原料を使っているにもかかわらず、仕込み水や製造方法、蒸留器の形状の違いによってまったく異なる性質のモルトウイスキーをつくり出しています。
テイスティングレビューで紹介しますが、グレンフィディックとバルヴェニーは香り・味わいがまったく異なります。水と製造方法の違いでこんなに違うなんてウイスキーは面白い!
ザ・バルヴェニーは、スコットランドでも数少ない伝統的なフロアモルティングを採用している蒸留所で、専属農家による地産大麦を使用。コンヴァルヒルの泉の湧水に大麦を浸した後、モルティングフロアにその大麦を広げ、モルトマン(麦芽担当者)が手作業で撹拌し、発芽させ麦芽を製造します。
ポットスチル(単式蒸留器)の形状も特徴的で、白鳥型の長いネックとバルヴェニーボールと呼ばれるネック下部のコブのような膨らみによりザ・バルヴェニーはハチミツのような風味が付与されるのです。ザ・バルヴェニーのボトルの首部分は「バルヴェニーボール」がデザインモチーフになっています。
「ザ・バルヴェニー 12年 ダブルウッド」は1993年に発売されました。熟成工程では、伝統的なウイスキー樽であるアメリカンオークのバーボン樽とホグスヘッド(バーボン樽を解体し、胴回りを大きく作り直した樽)でウイスキーを12年以上熟成した後に、スパニッシュオーク材のオロロソシェリー樽に詰め替えてさらに 9か月間熟成。その後、それぞれの樽のウイスキーを“タン”と呼ばれる大きなオーク樽に詰め替え、3~4カ月間かけてマリアージュ。
ザ・バルヴェニー 12年 ダブルウッドは、バーボン樽とシェリー樽それぞれの独特の個性を絶妙に調和させたウイスキーということです。
それぞれの工程を足していくと、実質13年以上の熟成といってもいいのではないかと。
ザ・バルヴェニー 12年 ダブルウッドのテイスティングレビュー・評価
ザ・バルヴェニー 12年 ダブルウッドの特性レーダーチャート
ザ・バルヴェニー 12年 ダブルウッドの特徴
コメント(ストレートでの評価 オススメ度:)
グラスに鼻を近づけると、木の香りを強く感じてから弱めのレーズン、さらに控えめに柑橘を感じ取れます。
口に含んでみると濃厚で華やかな花とはちみつの風味が強く、同時に麦芽の甘い穀物感、レーズン、チョコレート、木樽が感じやすいです。花とはちみつは鼻から抜ける香りにも強くあらわれ、ザ・バルヴェニー 12年 ダブルウッドの特徴的な要素といえるでしょう。とがった特徴要素はなく、とても穏やかでふくよかな印象。
余韻は40秒以上楽しむことができ、飲んですぐに濃厚な花・レーズン・木樽を強く感じた後は、10秒後にナッツのオイリーな風味があらわれ、20秒後にやや柑橘系の酸味とミント系のハーブの爽やかさが少し顔を出します。終始優しい甘味に包まれながら余韻が楽しめるでしょう。
アルコール刺激が弱いので、ストレートですいすい飲めてしまいます。
ザ・バルヴェニー 12年 ダブルウッドの飲み方別 オススメ度
飲み方 | オススメ度 |
---|---|
ストレート | 5 |
加水 | 4 |
オン・ザ・ロックス | 5 |
ハイボール | 3 |
ホットウイスキー | 4 |
加水 オススメ度:
フルーティーさが強まりますが、ボディは軽くなります。ストレートで特徴的だったふくよかさが弱まるので少しもったいなく感じました。
オン・ザ・ロックス オススメ度:
少し苦味を感じやすくなりますが、この苦味がまろやかでとても心地良くビターチョコのようです。はちみつやバニラ、レーズンの重厚な甘味が際立つので、氷がゆっくり溶けていく過程を楽しみながらじっくり味わいたい飲み方です。できればグラスを持つ手で温め過ぎず氷をゆっくり溶かしてお楽しみください。
ハイボール オススメ度:
黒糖のような風味があらわれました。コクのある甘さが特徴のハイボールです。ハイボールとしてはとてもおいしいのですが、他の飲み方と比べるとザ・バルヴェニー 12年 ダブルウッドの複雑でふくよかなおいしさがかなり弱まってしまいました。
ホットウイスキー オススメ度:
ストレートほどはありませんが、華やかな花とはちみつの風味が良いです。チョコレートはあまり感じられなくなりました。
やはりストレートと比べると香り・味わいが弱まっているように感じます。お湯による加熱で華やかな香気成分が揮発しやすいのかもしれません。
ザ・バルヴェニー 12年 ダブルウッドとグレンフィディック12年、ザ・グレンリベット12年の比較
姉妹蒸留所のグレンフィディック 12年と、当ブログの基準ウイスキーであるザ・グレンリベット 12年との比較をしてみました。色合いはザ・バルヴェニー 12年 ダブルウッドがダントツで濃い琥珀色をしています。
ザ・バルヴェニー 12年 ダブルウッドとグレンフィディック12年、ザ・グレンリベット12年の特性比較
ザ・バルヴェニー 12年 ダブルウッドとグレンフィディック12年、ザ・グレンリベット12年の特徴比較
これら3銘柄の比較表を用意しました。
ザ・バルヴェニー 12年 ダブルウッド | グレンフィディック 12年 | ザ・グレンリベット 12年 | |
---|---|---|---|
特性 | 香り・味わいともに豊か、とても穏やかでふくよかなまとまり | 香り・味わいともにバランスが良くそれぞれの要素が際立っている | 香り・味わいともに豊かでまろやかにまとまっている |
特徴 | ・濃厚で華やかな花、はちみつの風味が強い ・フルボディ寄りのミディアムボディ | ・フレッシュな洋ナシのフルーティさが強い ・爽やかで飲みやすいミディアム寄りのライトボディ | ・穀物やバニラやはちみつ等の甘さが強い ・クリーミーでコクがあるミディアムボディ |
ザ・バルヴェニー 12年 ダブルウッドは濃厚な花とはちみつタイプ、グレンフィディック 12年はフレッシュなフルーティータイプ。同じ敷地内の姉妹蒸留所ウイスキー同士はまったくタイプの異なるシングルモルトでした。ザ・グレンリベット 12年もはちみつ感が強いタイプで、はちみつの風味は3銘柄中もっとも強く感じました。ただ、ザ・バルヴェニー 12年 ダブルウッドは総合的に味わいが豊かでありながら優しくまとまっている印象です。
感想・まとめ:複雑で豊かな味わいが見事に調和
参考価格6,500~7,500円でシングルモルト12年ものとしてはちょっとお高い「ザ・バルヴェニー 12年 ダブルウッド」を紹介しました。なかなか普段飲みにするには難しい価格帯ですが、飲んで納得の豊かな味わいと穏やかさでした。オススメの飲み方はストレートかオン・ザ・ロックス。
頑張った日のごほうびにまったりと飲めたら、きっと幸せ気分に浸れるでしょう。
- 様々な要素の甘味が優しくまとまったウイスキーをお探しの方
- 自分へのごほうびウイスキーとして、穏やかで余韻が楽しめるウイスキーをお探しの方
- プレゼント用ウイスキーとして、予算5,000~10,000円で検討している方