その名に“マスターズ”と付けられた王道スコッチ「バランタイン」の銘柄のひとつ、バランタイン マスターズ。スーパーでよく見かけるバランタインは四角いボトルですが、バランタインマスターズは化粧箱入りの円柱型です。バランタインの年数表記ボトルは15年からが円柱型となり高級感が漂いますが、マスターズは年数表記なしで約5,000円という高級ラインナップ。
年数表記はありませんが、マスターズの名を持つバランタインがどのような味わいか気になるところです。
- ブラウンシュガーとカラメルの風味が強い。
- 時間差で柑橘感と華やかさが感じられる。
- 原酒の熟成感と若さが共存している。
記事の後半では同じバランタインシリーズの「バランタイン 7年」、「バランタイン 12年」との比較もしています。ぜひ最後まで読んでいってください。
バランタイン マスターズの基本情報・ストーリー
基本情報
銘柄 | バランタイン マスターズ |
原産国 | スコットランド |
分類 | ブレンデッド |
主要モルト | グレンバーギー、ミルトンダフ、グレントファーズ、スキャパなど |
アルコール度数 | 40% |
所有者 | ペルノリカール社 |
取扱い | サントリーホールディングス |
参考価格 | 4,800~5,500円 |
ストーリー
バランタインはウイスキー好きにとってはいわずとしれた王道スコッチブランドです。創業者はジョージ・バランタイン、創業当初(1827年)は食料品店でした。ジョージ・バランタインは食料品店でウイスキーも取り扱い、のちに長男に商売を任せ、自身はウイスキーのブレンダーに転身。初代マスターブレンダーとしてバランタインの礎を築いていきました。
ジョージ・バランタインがこの世を去ってから約50年後の1937年に、2代目マスターブレンダーのジョージ・ロバートソンによって「バランタイン 17年」が誕生しました。バランタイン 17年は当時、スコッチの中のスコッチ、“ザ・スコッチ”と呼ばれて大人気に。現在までの約90年間、バランタイン 17年のレシピはほとんど変わっていないとされています。
ジョージ・ロバートソンのもとでブレンダーとして修行したジャック・ガウディーは、三代目マスターブレンダーとして就任。45年もの間ブレンダーとして従事し、バランタインの世界的拡大に貢献。伝説のブレンダーと呼ばれました。
4代目マスターブレンダーのロバート・ヒックスは、ウイスキーの香り4000種以上を記憶し嗅ぎ分けることができたとか。そんな彼のニックネームは“The Nose”。ロバート・ヒックスの助手をしていたのが5代目マスターブレンダーとなったサンディー・ヒスロップでした。
5代目(現)マスターブレンダーのサンディー・ヒスロップは当初は生産部門のマネージャーを目指していたそう。そのためにブレンディングも学ぶ必要があり、3代目マスターブレンダーのジャック・ガウディーのもとで学んだそうです。学び始めて1年後にはブレンダーのメンバーとしてジャック・ガウディーに任命され、4代目ロバート・ヒックスからも経験と知識を伝えられ見事にマスターブレンダーに就任しました。
前置きが長くなりましたが、「バランタイン マスターズ」は何十年にもわたり技術の習得に励んできた現マスターブレンダーのサンディー・ヒスロップが開発した銘柄です。その味わいのイメージは、3代目ジャック・ガウディーがプライベートで嗜んでいた味わいとされます。
その構成は、長期熟成のモルト原酒と比較的若いグレーン原酒を使うことで、フルーティーでクリーミーな飲みやすさを追求しています。
バランタイン マスターズのテイスティングレビュー・評価
バランタイン マスターズの特性レーダーチャート
バランタイン マスターズの特徴グラフ
コメント(ストレートでの評価 オススメ度:)
香り
第一印象は、まさにカスタードプリンの香り。香り立ちは強く、ボトルのキャップを開けた瞬間から香りを感じることができます。フレッシュさはほとんどなく、カラメルとバニラのクリーミーさ、木樽と弱めのリンゴが感じ取れます。
味わい
香りで感じたほどのカスタードプリン感はありませんでしたが、口に含んだ直後に強めのブラウンシュガー、バニラ、カラメルを強く感じ、同時にアルコールのピリピリした辛い刺激も強めでスモーキーさも。ネーブルオレンジのような甘い柑橘、花のような華やかさ、木樽の風味も感じ取れます。リンゴは弱めです。まったりとした熟成感のある甘い風味がありながら若い原酒にありそうなアルコール刺激も共存していて、「長期熟成モルト原酒と軽やかな(=熟成年数の若い)グレーン原酒のブレンド」とはこういうことかと納得の味わいでした。
余韻
余韻の長さはやや長く、ぼくの感覚では35秒ほど。ブラウンシュガーやカラメル、華やかさは早い段階で消えていき、最初から感じるバニラと途中から感じやすくなる柑橘風味は最後まで感じ取ることが出来ました。飲んでいる時点でもスモーキーさがありますが、飲み終えた後の鼻から抜けていく風味にしっかりめのスモーキーさがあります。
バランタイン マスターズの飲み方別 オススメ度
飲み方 | オススメ度 |
---|---|
ストレート | 3 |
加水 | 4 |
オン・ザ・ロックス | 5 |
ハイボール | 3 |
ホットウイスキー | 5 |
加水 オススメ度:
数滴の加水でカラメルの甘い風味や柑橘感が強まり、アルコール刺激は落ち着きます。
バランタイン マスターズは熟成感がありながらアルコール刺激も強めなので、ストレートよりもアルコール感が弱まる加水をオススメします。
オン・ザ・ロックス オススメ度:
アルコール刺激がほぼなくなり、柑橘感も弱まります。一方でほろ苦さとメロン風味、穀物の柔らかい甘さが目立つように。
もともと味わい濃いめのウイスキーなので、氷が徐々に溶けていってもバランスが崩れにくく、ゆっくりと味わいながら楽しむことができます。
ハイボール オススメ度:
ブラウンシュガーとカラメルが目立つ、やや甘ったるいハイボールになりました。リンゴや柑橘がほとんど感じ取れなくなったことで少し単調な味わいに。
おいしいのですが、ストレートで感じていた複雑な特徴がなくなってしまったのが残念です。
ホットウイスキー オススメ度:
ブラウンシュガーは弱まりましたが、それ以外のストレートで感じた要素はバランス崩さず、アルコール刺激もほとんど感じなくなりました。程よい甘さと木樽の風味が心地良いです。
個人的に、バランタイン マスターズのおいしさを最も感じ取ることができた飲み方でした。
バランタインシリーズ マスターズと 7年、12年との比較
価格帯はまったく異なりますが、同じバランタインシリーズでリーズナブルな銘柄のバランタイン 7年、バランタイン 12年と飲み比べました。
バランタインシリーズ マスターズと 7年、12年との特性比較
バランタインシリーズ マスターズと 7年、12年との特徴比較
これら3銘柄に絞った比較表を用意しました。
バランタイン マスターズ | バランタイン 7年 | バランタイン 12年 | |
---|---|---|---|
特性 | 味わい濃く、熟成感と若さが共存 | 濃くはないが、個性がある | 穏やかながら複雑でバランス良い |
特徴 | ・ブラウンシュガーとバニラ、カラメル ・柑橘系の風味と木樽感 ・ミディアムボディ | ・リンゴの爽やかなフルーティーさ ・ふんわりバニラの甘い風味 ・ライトボディ | ・一瞬だけリンゴと華やかさ、バニラ ・クリーミーで甘い風味 ・ライト寄りのミディアムボディ |
価格でいうと、マスターズは約5,000円で7年や12年の倍近く。その割に若い原酒が使われていそうな強めのアルコール刺激が気になるところです。アルコール刺激では、[12年<7年<マスターズ]でマスターズがもっともピリピリ刺激を感じました。
フレッシュなフルーティーさを求めるなら7年、バランスがとれていてまろやかタイプを求めるなら12年、熟成感が味わいたいならマスターズ(若さもあるけど)でしょう。
約5,000円という価格を考えると、味わいとのコストパフォーマンスは低い印象です。アルコール刺激がなければ、熟成感があって良いのですが。
感想・まとめ:若い原酒のアルコール刺激がなければ…
王道スコッチウイスキー「バランタイン」ブランドから、バランタイン マスターズを紹介しました。
個人的には、バランタインシリーズのバレルスムース、7年、12年、17年などは万人向けに作られている構成だと感じていますが、マスターズは毛色が異なりました。好みに刺されば良いのですが、ボトル一本を購入すると後悔する方も結構いるだろうなーというのが正直な感想です。
気になる方はバーや量り売りしている酒販店でお試ししてみることをオススメします。
- アルコール刺激は気にせず、カラメルやバニラとまったり熟成感を味わいたい方
- バランタインファンの方