緑色のビンに白いラベルと黒文字がシンプルながら力強い印象を受ける「ラフロイグ 10年」。“アイラモルトの王”と称されるほど世界で愛されているスコッチの聖地アイラ島のシングルモルトウイスキーです。
初めて飲んだときは「なんてクセが強いウイスキーなんだ!」と驚きましたが、ボトルが空くころにはクセになってしまいました。
- 強烈なスモーキーと薬品感
- バニラの甘い風味はあるが、味覚としての甘味は少ない
- 口の中ではオイリーで、後味はドライな飲み口
記事の後半では、同じアイラモルトの「ボウモア 12年」と当ブログの基準ウイスキー「ザ・グレンリベット12年」との比較もしています。ぜひ最後まで読んでいってください。
ラフロイグ 10年の基本情報・ストーリー
基本情報
銘柄 | ラフロイグ 10年 |
原産国 | スコットランド(アイラ島) |
蒸留所 | ラフロイグ蒸留所 |
分類 | シングルモルト |
仕込み水 | キルブライド川の水 |
アルコール度数 | 43%(40%品もあり) |
主な熟成樽 | バーボン樽 |
所有者 | サントリーホールディングス |
取扱い | ビームサントリー |
参考価格 | 約6,500~7,000円 |
ストーリー
「ラフロイグ」とはゲール語で「広々とした湾の美しい窪地」を意味し、その名の通り、ラフロイグ蒸留所は静かで美しい入り江に面して建てられています。蒸留所は1815年にジョンストン家によって建てられ、1954年までジョンストン一族によって運営されました。一族最後の経営者はイアン・ハンター、彼はラフロイグがキーモルトに使われているブレンデッドウイスキー「アイラミスト」も手がけました。
イアン・ハンターの死後は、スコッチウイスキー史上初となった女性所長兼経営者:ベッシー・ウィリアムソンが蒸留所を盛り上げ、その後経営権は何度か移り、現在ではビームサントリー社が所有しています。
ラフロイグは個性が強いアイラモルトの中でも際立った風味が特徴。その要因として、フェノール値の高い自家製麦芽と仕込み水となるキルブライド川の水が挙げられます(フェノールとは薬品・消毒臭の原因となる物質)。
ラフロイグはフロアモルティングを続ける数少ない蒸留所としても有名です。フロアモルティングとは大麦をコンクリートの床に広げて発芽が均一になるように撹拌を繰り返す作業のこと。発芽の進行を止める工程ではピート(泥炭)を焚いて麦芽(発芽した大麦)を乾燥させます。自家製麦芽に使われるピートは海に近い湿地から切り出した苔類や海藻が多く含まれ、これがヨード香豊かな個性となっています。
またキルブライドの水はミネラルが豊富ですでにピートの香りも含まれていて、大麦の浸漬を含めた仕込み水に使用されるため、自家製麦芽の使用比率は15%ほどでもラフロイグの強烈な個性を作り上げるのには十分なようです。
ラフロイグはチャールズ国王が皇太子時代の1994年、シングルモルトウイスキーとして初の王室御用達許可証を授かりました。蒸留所の建物の白い外壁とボトルラベルには、ダチョウの羽を3本あしらった別名“平和の楯”と呼ばれるプリンス・オブ・ウェールズの紋章が飾られています。
ラフロイグ 10年のテイスティングレビュー・評価
ラフロイグ 10年の特性レーダーチャート
ラフロイグ 10年の特徴
コメント(ストレートでの評価 オススメ度:)
開栓直後から草のニュアンスをまとった強いスモーキー香が漂い、グラスに注ぐとその香りはさらに強く広がっていきます。グラスに鼻を近づけると、強烈なスモーキーとヨード香(イソジンや正露丸のにおい)の他に甘いバニラ、焦がした木、弱めのヨーグルトのような酸味をともなう乳製品、木樽やわずかに粘土が感じ取れます。
口に含むと、スモーキーとヨード香、バニラと弱めのリンゴの甘い風味、焦がすほどまではいかないべっこう飴のようなカラメル感、そしてブラックペッパーのようなスパイシーさがあります。スモーキーさは例えるならばたき火の燃え始めで煙がもっとも多く出ている時のにおい。純粋に味覚として舌で感じる甘味は弱めですが、鼻から抜けていく甘い風味が強いです。口内で味わっている時はオイリーですが、飲み終えるとドライになるのが不思議。
面白いのは、口に含んで口内にとどめずに喉奥に流すと強い焦げを感じ、口内でとどめると焦げ感は少なく甘さやフルーティーさが楽しめること。スモーキー初心者の方が口に含んで、「うわっ、これはキツイ」と感じてすぐに飲み込んでしまうとより辛い目にあうかもしれません。
スモーキーウイスキー初心者の方が飲む際は、覚悟を決めて口内でゆっくり味わいましょう。その方が甘い風味が多様に楽しめますよ。
余韻は長く、飲み込んで5~6秒後に風味のピークが訪れ、まずはスモーキーとヨード、土と草、焦げ、バニラの風味と甘味を強く感じます。ピークを過ぎて最初に感じた風味が弱まっていくと(20秒後くらい)ビターチョコレートがあらわれ、その後は複雑な香味の変化がほとんどなく弱まっていきます。スモーキーとバニラは60秒経っても感じることができ、スモーキーさに関しては、例えば寝る前にラフロイグ 10年を飲んだとすると歯磨きをしてから寝たとしても翌朝も鼻の奥にスモーキーが残っていることがあります。
ラフロイグ 10年の飲み方別 オススメ度
飲み方 | オススメ度 |
---|---|
ストレート | 5 |
加水 | 3 |
オン・ザ・ロックス | 5 |
ハイボール | 5 |
ホットウイスキー | 3 |
加水 オススメ度:
数滴の加水でボディは一気に薄れてしまう印象。ケミカルな苦味(風邪薬系の苦味)が喉奥に居座ります。
スモーキーが苦手な方にとっては飲みやすいかもしれませんが、それならば他の飲み方が良いと思います。せっかくの個性がもったいない。
オン・ザ・ロックス オススメ度:
苦味は少し強まりますが、加水の時のようなケミカルな苦味ではありません。甘味は口に含んだ直後は落ち着いていますが、口内であたたまることで甘味が増していきます。
また氷が溶けてくるとフルーティーさが強まってくるので、時間の経過とともに味わいの変化が楽しめる飲み方です。
ハイボール オススメ度:
炭酸の酸味とシュワシュワが程よく全体をキリっと引き締めてくれます。甘味・酸味・渋味のバランスが良く、余韻は弱まりますが、スッキリとした飲み口のぜいたくハイボールです。
ホットウイスキー オススメ度:
甘さがかなり弱まり、苦味が際立ちます。熱によってバニラ風味が揮発してしまったのでしょうか。
ややフルーティーな風味がありますが、ストレートに比べるとだいぶ薄い印象。
ラフロイグ 10年とザ・グレンリベット 12年との比較
アイラモルトの「ボウモア 12年」と当ブログの基準シングルモルトウイスキー「ザ・グレンリベット 12年」と比較しました。
ラフロイグ 10年とザ・グレンリベット 12年との特性比較
ラフロイグ 10年とザ・グレンリベット 12年との特徴比較
これら3銘柄に絞った比較表を用意しました。
ラフロイグ 10年 | ボウモア 12年 | ザ・グレンリベット 12年 | |
---|---|---|---|
特性 | 強烈な個性で、香りが豊か(探ってみるとスモーキーの裏に色々な風味) | スモーキーながらも上品さがある。香り・味わいは豊かでバランスも良い。 | 香り・味わいともに豊かでまろやかにまとまっている |
特徴 | 〇スモーキー、ヨード香、潮が強い 〇バニラ、弱めのリンゴ、カラメルの甘い風味 〇味わっている時はオイリーでミディアムボディだが、後味はドライでライト | 〇スモーキー、ヨード香、潮の風味は強いが、ラフロイグ 10年よりは弱い 〇柑橘フルーティー、はちみつ、華やかな花の風味 〇クリーミーさもあるミディアムボディ | 〇ピート由来のスモーキーさはほとんどない 〇穀物やバニラやはちみつ等の甘さが強く、華やかさがある 〇クリーミーでコクがあるミディアムボディ |
ザ・グレンリベット 12年はシングルモルトの優等生タイプで甘味が強く、香り・味わいともに無難に万人受けするイメージであるのに対し、ラフロイグ 10年は甘味は弱くスモーキー・薬品のようなヨード香がずば抜けていて好き嫌いが分かれるでしょう。
同じアイラモルトであるボウモア 12年は、ラフロイグ 10年よりも穏やかなスモーキーさ、ヨード香です。フルーティーさや華やかさ、クリーミーな味わいはザ・グレンリベット 12年に通じるものがありますので、ザ・グレンリベット 12年を好む方にはボウモア 12年の方が親しみやすいでしょう。飲み比べると、ラフロイグ 10年の強烈なクセを改めて実感します。
最初はスモーキー過ぎて飲みにくいと感じていた人でも、だんだんそれがクセになっていって気づいたらハマっていたというパターンもあります。
実はラフロイグ 10年は2種類あります。今回紹介しているアルコール度数43%・容量750mlのものと40%・700mlのもの。飲み比べると味わいの特徴バランスはほぼ変わらず(40%品の方でほんのわずかにですがミントのような風味)、濃さが違います。たかが3%分と思われるかもしれませんが、この3%でかなり差を感じました。
感想・まとめ:クセになったらウイスキーの世界がさらに広がる
スコッチウイスキーのアイラモルトの中でもかなりクセが強いことで有名な「ラフロイグ」。そのスタンダードボトルである「ラフロイグ 10年」を紹介しました。たき火燃え始めの、火と煙がもっとも多い時に感じるような強いスモーキーさと消毒液などの薬品臭を存分に味わえるウイスキーでした。バニラの風味はありますが、甘味自体は弱く、本当にスモーキー超特化型のウイスキーなんだと改めて感じました。
強烈な個性のためウイスキー初心者にはオススメできません。ラフロイグの後に別のウイスキーを飲む場合も、後味に残るラフロイグの個性の前では薄れてしまうかもしれません。ウイスキーを飲む順番も大事。
- スモーキーウイスキーに慣れていて、より強いスモーキーさや薬品感を楽しみたい方
- ブレンデッドウイスキーのアイラミストを飲んで、そのキーモルトであるラフロイグに興味がある方
- 話のネタに超スモーキーウイスキーを飲んでみたい方。(バーでのお試しや量り売りをオススメします)
- スモーキーや薬品のにおいが苦手な方
ラフロイグ 10年にはアルコール度数40%、700mlの商品もあります。オススメは濃くて容量が多い43%、750mlです。その時々で価格差は異なりますが、1ml当たりの価格を計算してみると43%品の方がお得なことが多いんです。購入時はきちんと価格を比較して選んでください。
ラフロイグに挑戦する前に、ラフロイグがキーモルトとして使われているブレンデッドウイスキーを試すという選択肢もあります。「アイラミスト」は、ラフロイグを中心に、スペイサイドモルト、ハイランドモルト、グレーンをブレンドして飲みやすくしたブレンデッドウイスキー。気になる方は下のリンクからレビュー記事を読むことができます。